上写真=飯野七聖の持ち味であるアグレッシブなアップダウンも、強風強雨でかき消された(写真◎J.LEAGUE)
■2022年3月18日 J1リーグ第5節(ニッパツ/6,689人)
横浜FM 0-0 鳥栖
得点者:(横)なし
(鳥)なし
「競り合ったあとの一瞬の背後」
新潟県出身の飯野七聖でさえ、「いままでで一番寒かったですね」と振り返るほどの低温、そして風雨。ピッチは水びたしでボールがなかなか進まない。
川井健太監督は3-4-2-1の配置におけるセンターフォワードの先発に、高い技術を誇る宮代大聖を起用、後半からはフィジカルコンタクトに長ける垣田裕暉を投入し、宮代をシャドーに置いて共存させる戦いを仕込んできた。前節は宮代に代えて垣田が入り、決勝点を挙げている。
「ピッチコンディションがいいという前提で話をすると」で始まる川井監督の回答は、本来のプランがどこにあったかのヒントになる。
「マリノスはハイラインでその背後を宮代がうまく取れるので、狙いとしてありました。ダメージを与えながら垣田を入れて高さを加え、少し難しい中での起点作りを考えました。2人をともにプレーさせたのはその二つをリンクさせられると思ったからで、その順番はこの時系列のイメージではありましたが、グラウンドコンディションの問題で想定より早くなりましたね」
大雨と強風で、プランに手を加える必要が出てきた。ピッチの中での対応については、飯野が振り返る。
「お互いに背後に蹴るシーンが多くなりましたけど、その中でも中盤での球際や、戦わなければいけないところはポイントとして抑えていました。細部ですし目立たないところですけど、五分五分のボールを前にこぼすといったところは、気が抜けることなく90分できたので、次にもつながっていくと思います」
ボールコントロールを不能にさせるほどのピッチコンディションだから、嫌なアクシデントが起きてもおかしくはなかった。だからこそ、細部でごまかしが効かなくなる。
飯野自身も、プレーの選択に微調整を加えていった。
「自分で運んでいくのは無理だと早い段階で割り切れていたので、チャンスが来るなら競り合ったあとの一瞬の背後と思っていました。逃さず狙い続けましたが、形にはなりませんでした」
川井監督は収穫として、ベンチの指示を待たずに選手がピッチの状況に応じて自分たちで判断してアジャストさせたことを挙げた。飯野の判断もその一つに挙げられるだろう。そうして得た、5試合負けなしだ。
「チームとして勝ち点3を取りに行くのは大前提として、でもマリノスが相手で一つのスキが失点につながることは理解していました。自分が高い位置にいると守備で戻れないと感じたので、後半の真ん中過ぎからは守備的にして、攻撃はそこから出ていくことにしました」
万全のピッチであれば、横浜FMの左サイドバック、小池龍太との丁々発止のバトルで見る者を楽しませただろう。実現せずに残念だが、それは次の機会に。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE