上写真=アダイウトンは決勝点になるチームの2点目を61分に決めた(写真◎J.LEAGUE)
最初はうまくいかないこともある
森重真人のゴールで先制した直後だ。アダイウトンが追加点を決めた。後半からピッチに入った三田啓貴が相手のボランチ塩谷司に左からプレスをかけ、逆方向へ蹴り出したパスがミスになって紺野和也のもとへ転がった。
敵陣中央でボールを奪取に成功したFC東京はこの瞬間から選手が一斉にゴールへ動き出す。紺野は三田に預けてボックス内へ。その動きに広島守備陣がつられるなか、三田は冷静にボランチ背後のスペースに入り込み、フリーになっていたディエゴ・オリヴェイラにパスを出した。
ゴールに向かう連続した動きで広島守備陣に後手を踏ませると、D・オリヴェイラは一拍をおいて、相手3バックの左CB佐々木翔の外側へ駆け上がる安部柊斗にパスを出した。フリーで打ったシュートはGK林卓人に弾かれるが、そのこぼれ球にアダイウトンが詰めていた。
守備から攻撃へと局面が変わった瞬間、アダイウトンは左から中央へとポジションを移し、ボックス内に入り込んでいた。GKが弾いて目の前に転がってきたボールを右足インサイドでとらえ、ゴール右下を狙った。「ゴールシーンについて、明確にシーンを覚えていないですが、こぼれてきたところを、GKのいないコースにしっかり打つことができました」。ボールは、ポストの内側まで戻っていた広島の藤井智也の股下を抜けてゴールイン。FC東京が試合を決める2点目を奪ってみせた。
「立ち上がりから相手の守備組織が良く、攻撃するのが難しいと試合の最初の段階で気づきました。今日はしっかり戦うことを徹底したいと考えてプレーしていました」
前半は狙いとする戦いができず、相手の圧力に苦しんだとアダイウトンは振り返った。だが、状況に応じた選択をとり、耐えるべき時間をしっかり耐え、そして決めるべき時にきっちり決めた。74分に鮎川峻に得点を許したため、結果的にアダイウトンのゴールが決勝点になった。80分に東慶悟と交代してベンチに下がるまで攻守に働き、勝負を決めるゴールもスコアしたのだ。
「ゲームを支配して攻撃するというのが監督が意識しているゲームプランだと思いますが、最初はうまくいかないこともあるでしょう。自分たちがしっかり練習を重ねて、力をつけていければと思っています」
目指すスタイルの完成は、まだまだ先だ。アルベル監督は広島戦後に「勝ったときこそ反省を」と話したが、アダイウトンもしっかりその意識を共有していた。試合後のコメントは成長に対する強い意欲も感じさせた。
この先、壁にぶつかることもあるかもしれない。ただ、FC東京の選手たちには、アダイウトンには、より良い未来に向かって歩み続けているという実感があるようだ。