上写真=宮城天が決めた今季初ゴールは「練習通り」だったという(写真提供◎川崎フロンターレ)
「成長したのかなと思いますね」
過密日程の開幕5連戦を終えて、鬼木達監督は「2年目」の選手たちの意欲を感じているという。そのうちの一人が宮城天。カターレ富山への期限付き移籍から復帰して、今年が川崎フロンターレでプレーする2年目だ。
「人も代わればサッカーも変わってくるので、去年やおととしとはまた違う色を出さなければいけないと思っています」
アカデミー育ちのドリブラーとして期待を集め、昨年も9月の月間ベストゴールに選ばれた鹿島アントラーズ戦の強烈なミドルシュートなど、印象的なプレーがあった。しかし、今年は今年。
「去年はある程度、形があって、今年はゼロからというわけではないけれど、監督も言っている通りに作り上げている段階です。そこでチームに自分の色を出して作っていければ、試合出場も増えると思っています」
今季第1号はすでに生まれている。3月6日のガンバ大阪戦、0-1のビハインドで迎えた73分に左ウイングとしてピッチに入ると、2分後に同点ゴールを決めて仕事をしてみせた。小塚和季が中央付近から送ったループ気味のパスを左の深い位置で受けると、シュートフェイントから巧みに切り返すようにして左足で内側にトラップして右足の前にボールをぴたり、ゴールエリアの左角付近から逆サイドネットにていねいに送り込むクールなフィニッシュを見せた。
「浮き玉の裏へのパスとか逆から振られたパスは、切り返したりトラップするのが得意なので、普段どおりのプレーでした。負けている場面で緊張感のあるところであのプレーができたのは、成長したのかなと思いますね」
アシストした小塚もなかなか出番に恵まれない中で、一緒に結果を残した。
「カズくんとは一緒にやる機会も多いですし、カズくんの特徴を考えてパスセンスを引き出すために出せるタイミングで動くように意識しています」
まさに練習の成果だったのだが、喜びきれないのは、そのさらに2分後にゴールを許したからだ。しかも、決められたのは宮城がマークしていた小野瀬康介。縦に抜けるフェイントからカットインしてきて、左足でシュートを放つ瞬間に右足を伸ばしたのだが、ボールが足にチップするように当たってドライブがかかり、GKチョン・ソンリョンの頭上を破られた。
「相手は右利きだったのでクロスに早く対応しようとしたんですけど、それでカットインしたところに遅れてしまいました。もっと中間の位置に立って反応できる位置にいればよかった」
ピッチに立ってからわずか4分で、喜びと悲しみを味わうことになった。その両方を生かさなければ、狙い続けるレギュラーポジションは約束されない。左ウイングは今季、宮城のほかにはチャナティップ、マルシーニョ、知念慶、小林悠、遠野大弥がプレーしている。
「いろんな選手が出ていて、バリエーションがあると思われますけど、逆に言うと固定できていなくて、圧倒的な人がいないということです。だから、自分がチャンスをつかみとれるように頑張ります」
U-21日本代表候補にも選ばれて3月7日からキャンプに参加、最終日となる9日の練習試合でドリブルからゴールをお膳立てしている。パリ・オリンピックを目指すチームで同世代に刺激を受けて、それでも「チームで結果を残し続けなければ、オリンピックを目指すことはできないので、まずはチームで絶対的な存在になってからだと思います」と冷静。
現在地を見つめながら、「絶対的存在」への努力は続いていく。