上写真=鬼木達監督は浦和戦で逆転勝利に導いたが、さらなる意欲を隠さない(写真◎小山真司)
「いま中なのか外なのか」
浦和レッズと戦ったJ1第10節の前半45分のとらえ方が、実に鬼木達監督らしかった。序盤からハイプレスを効かせて奪いに来る相手に対して、川崎フロンターレはややスロースタート。押し込まれる局面が増えて33分には先制ゴールを許し、そのまま0-1で折り返している。
「決してすごく圧を感じて何かができなかったというよりは、自分たちがやるべきことを自信を持ってやらなければいけなかったと思います」
浦和の調子の良さに押された、というよりは、自分たちのタスクをこなすことができなかった、という分析だった。だからハーフタイムに選手たちには頭を整理させた。
「浦和は最初の20分、25分はどのゲームでも強度を高くプレーしていたので想定できることでした。自分たちは取ったあとやセカンドボールの処理の、見る場所の問題だと思っていました。ゲームを見直しても自分たちで、守備より攻撃で改善できることだと思いました」
見る場所、というのは、奪ったボールをどこに運ぶべきか、ということだ。確かに前半は守備から攻撃に切り替わる最初のパスで、出し手と受け手の意図が微妙にずれて珍しくパスがつながらない一瞬が何度も見られた。
「顔を出してほしいタイミングで顔が出てこなかったり、本当にちょっとした使い分けというか、いま中なのか外なのか、背後なのか足元なのか、同じ絵を描くことができるかが大事になってきます」
連覇しているこの2年は、絶好調のときにはまさにきれいな絵を全員でピッチに描いていた。いまどうすれば再び描くことができるか、その成功体験から導き出すことができる。
「同じ絵を描くには、全員が逃げずにいけるかどうかですね。全員が強気でやっているときは、前へ前へ行きますし、バックパスが間に入っても、その方が次への展開が早くなるから、という意味があります。そこを僕たちがもう少し合わせていきたいと単純に思います」
「僕たちが」という言葉がヒントになりそうだ。ピッチの中の選手はもちろん、ベンチに控える選手も、鬼木監督とスタッフも、共通認識があればこそ、という意志。
浦和戦では62分に家長昭博が、64分に山根視来が決めて一気に逆転に成功し、勝利を収めた。もちろん、鬼木監督にはさらなる欲がある。
「そこから3点目をどう取りにいくかですよね。そこは課題というか、自分たちの中でもう少し相手が嫌なことをするというか、相手が同点にするために使ってきた力を逆にはがして3点目を取りにいく姿勢を、なかったわけではないですが、もう少し出してもいい」
遠慮はいらない、ということだ。開幕から過密日程の5連戦の最後は、ガンバ大阪が相手。「3点目」を射抜く姿勢を、アウェーの地で披露する。