上写真=プロデビュー戦となった2日の神戸戦で先発し、フル出場を果たした山根陸(写真◎J.LEAGUE)
世界を知る選手と戦った価値ある90分
今季からトップでプレーするユース出身のルーキー、山根陸は2日のヴィッセル神戸戦で実に堂々たるプレーを披露した。藤田譲瑠チマとボランチコンビで先発すると、少ないタッチによるリズムを生み、ボールを循環させた。守備でも鋭いアプローチでボールに絡み、相手の攻撃を遮断する。
選手個人のパフォーマンスについて言及することが少ないケヴィン・マスカット監督も試合後に、周囲の選手が山根をうまくサポートしたと強調しつつ、「山根のご家族も彼を誇りに思うでしょう。私が日々の練習での彼のプレーを信頼しなければ、ピッチに送り出していません。チーム全員で素晴らしいプレーをやってくれました」とそのプレーぶりを称えていた。
横浜FMはボールを奪ったあと、素早い切り替えから一気に相手攻撃に迫る攻めを得意とするが、山根は何度も密集からボールをうまく逃がし、ウイングの仲川輝人や宮市亮のサイド攻撃につなげていた。光ったのは技術の高さと、ともに戦況を冷静に判断する能力だ。ボールを受ける前には何度も首を振り、周囲の状況を確認。藤田との距離感もよく、スムーズなビルドアップの実現に貢献した。
しかし、本人は手放しでは喜んではいなかった。試合から2日後の囲み取材でデビュー戦を振り返った。
「試合前はデビュー戦ということもあって緊張していました。でも監督やコーチ、スタッフの方々などたくさんの人たちがサポートしてくれて自信を持ってピッチに立てました。ただ出来としては、満足できるものではなかったですけど、世界で戦ってきた選手たちと対戦できたというのは、これからのサッカー人生においても価値のあるものだったんじゃないかなと感じています」
ともにプレーした宮市や西村拓真もそのプレーを称賛していたが、本人は課題にフォーカスしていた。「前半の入りは少し堅くなってしまって、ビルドアップのところでうまくいかないシーンが多かった。後半は強度が落ちて守備でボールを奪うシーンが少なくなった。ああいうスピード感や強度の中で質を落とさずにやり続けなければ、戦えない」と自戒する。だから神戸戦の90分は「納得できるものではなかったです」。
はた目には満点デビューにも映ったが、山根の求める場所はもっと高いところにある。だから『18歳デビュー』と騒ぐ周囲の反応も、冷静に受け止めていた。「自信になった自分のプレーもありましたけど、まだまだ課題がありました。なので安易に次の舞台とか言える立場、実力には達していないと思っています。もしチャンスをいただいたときには、自信をもってこの前の試合の反省点を含め、次につながる試合をしたい」。その冷静さも山根の魅力なのかもしれない。
今回は出場停止や故障により欠場者が出たことによって、出番を得た。そのことをしっかり把握し、「自分のポジションに空きが出て、自分が出られましたけど、理想を言えば、自分がファーストチョイスになるくらいもっと実力をつけなければいけないし、スタメン争いに加わっていけるくらいの野心とか実力を練習からつけていければと思っています」とその足はしっかり地についている。
プロでの一歩を踏み出し、より力強い二歩目、三歩目を刻むために、山根はこれからも日々、精進していくと誓った。