上写真=決勝ゴールはレアンドロ・ダミアン。昨季得点王が開幕で勝利をもたらした(写真◎小山真司)
■2022年2月18日 J1リーグ第1節(等々力/17,544人)
川崎フロンターレ 1-0 FC東京
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン
(F)なし
「割り切るところは割り切って」と鬼木監督
「私がどれだけ選手を誇りに思うか、想像してもらえると思います」
FC東京のアルベル監督は、敗れたものの胸を張った。川崎フロンターレ対FC東京というカードで組まれた2022年Jリーグのオープニングマッチ。序盤に川崎Fが優位に進め、20分ごろからFC東京が盛り返し、後半もそのテンポのまま進みながら、川崎Fがセットプレーで先制して逃げ切る、が大きな流れだった。つまり、多くの時間でFC東京が主導権を握っていた。
川崎Fは懸案のアンカーに大島僚太を起用。序盤はここを起点にしながら、左ウイングのマルシーニョの快足を躍らせて、守備ラインの裏に潜ってはチャンスをうかがった。
潮目が変わったのは、20分過ぎか。FC東京がベンチ前でアルベル監督の指示を仰いで修正をかけた。ディエゴ・オリヴェイラは「どんな指示があったかは秘密」と笑わせたが、そこから落ち着いてボールを動かし始めたから、効果に間違いはなかった。
24分、右から中に入ってきたレアンドロがGKチョン・ソンリョンと1対1になった。いきなり開幕デビューとなった高校生ルーキーの松木玖生が、得意の左足で狙ったのは28分。36分には再びレアンドロがミドルシュート。38分、エンリケ・トレヴィザンがセンターバックの位置からするすると持ち上がってミドルシュート。43分にも松木の落としからディエゴ・オリヴェイラが狙った。後半に入っても、51分にまたもレアンドロがGKと1対1。一気にチャンスが増えたのは偶然ではないだろう。
川崎Fの対応も落ち着いていた。鬼木達監督は「途中で難しい試合になると思ったので、割り切るところは割り切ってプレーさせました」と切り替えた。81分には遠野大弥の左CKに対してニアサイドに飛び込んだレアンドロ・ダミアンが、バックヘッド気味に頭を振ると、攻守連発だったGKヤクブ・スウォビィクが伸ばした手の先を越えて、逆サイドネットに吸い込まれていった。これが決勝点。
もちろん「ゲームの内容としては、前半で得点しなければいけなかったですし、後半はかなり難しい時間が増えました」と反省は残る。だが、「難しいゲームをしっかり勝ちきれたこと、選手が体を張ったことが良かった」と、異なる戦い方に移行して勝ち切る強さは、まさにチャンピオンチームの風格。
新しい風を吹かせたFC東京と、王者の道を堂々と歩み始めた川崎F。2022シーズンの開幕を高らかに告げるにふさわしい、白熱の好ゲームだった。
現地取材◎平澤大輔 写真◎小山真司