上写真=強力なFW陣を生かすためにも新スタイルの完成が待たれる(写真◎Getty Images)
選手からポジティブな声
Jリーグ最多タイトルホルダーでありながら、ここ5シーズン無冠に終わっている鹿島が、変革の時と迎えている。クラブは創設31年目にして初めてブラジル人以外の外国籍監督を招へい。重要なシーズンの指揮を、スイス人のレネ・ヴァイラー監督に託した。
しかし、である。新指揮官はコロナ禍の入国制限によって来日がかなわず、キャンプはおろか開幕戦にも間に合わないことになった。キャンプではヴァイラー監督同様に2022シーズンから就任した岩政大樹コーチが中心となって指導。新指揮官の意図をチームに落とし込んでいる。
新10番の荒木遼太郎は「去年とは変わったという印象を受けていて、しっかりビルドアップをして相手のゴールに迫っていくサッカーをやっている」と取り組みについて説明した。強度の高さと素早い切り替え、鋭利なカウンターはこれまで通り武器としつつ、スムーズなビルドアップを実現し、引かれた相手からもゴールを奪う形を磨いている。鳥栖でポジショナルプレーを実践してきた樋口雄太は「システム的には鹿島の伝統である4-4-2というのはベースだと思います。その中で攻撃の時、守備の時に常に4-4-2かと言われるとそうではないです。そこは選手のアイディアだったり特徴を生かしながらになってくる。守備の時は4-4-2のブロックを作ったりもしますけど、攻撃の時はより選手の特徴を生かした配置に変わると言うか、選手が自分たちが考えてベストの位置を選択していく感じです」とスタイルについて語った。
岩政コーチは解説者時代にも、折に触れて攻守それぞれの局面でシステムが可変することのメリットとデメリットを説いていたが、大前提として相手の戦い方を踏まえたうえで攻撃と守備とで形を変えながらプレーし、優位性を獲得していく狙いがある。先日のプレシーズンマッチ『いばらきフェスティバル』では、水戸ホーリーホックに16回目の大会で初めて敗れることになったが、試合後、岩政コーチは「メンバーの組み合わせや、立ち位置を変えてもらいながら、いろいろな情報を得られた」とポジティブなコメントを残した。ベースの陣形も途中で4-4-2から4-2-3-1に変更。ボランチで先発した樋口は途中から右サイドハーフに入った。
プレシーズンマッチであり、チームの持ち味を最大化するためのさまざまなテストを試みていたのは間違いないところ。指揮官が来日していないことで2022シーズンモデルを深く読み解くことは難しいが、優位性を生み出すための「可変」は、新生アントラーズの一つのキーワードになると思われる。