状況に応じた選手起用も可能
次に2022シーズンの陣容についてだが、オフの出はいりで手薄となった感が否めないのはセンターバックだろう。犬飼智也と町田浩樹が移籍し、昨季のレギュラーCBがそろっていなくなったからだ。代わりにキム・ミンテが加入し、前述の水戸戦では関川郁万と組んだが、まだ完全に呼吸が合っているとは言い難い。ブエノも含め、どのタイミングで最適なコンビを見いだすことになるかは気になるポイントだ。現チームが重視するビルドアップ面を考えてもCBの人選は極めて重要。早急に最適化を図りたい。
一方でレオ・シルバ、永木亮太が移籍したことで陣容が入れ替わったボランチは、すでに計算が立っている印象を受ける。鳥栖から樋口、甲府から中村亮太朗が加入。水戸戦では樋口とピトゥカでスタートし、途中からは樋口がサイドに回って三竿とピトゥカがコンビを組んだ。攻守のバランスを考えるとボール保持率で上回れないケースでは守備に長けた三竿とアグレッシブなプレーが持ち味のピトゥカのコンビが一番手と言えるかもしれない。樋口はサイドでの起用も増えると予想されるが、状況に応じて選択できるメンバーがそろったと言えるだろう。
そしてサイドハーフ。このポジションは最も層が厚いポジションかもしれない。水戸戦で先発した荒木(左サイド)、和泉竜司(右サイド)に加え、途中からプレーした樋口、ファン・アラーノ、仲間隼斗、アルトゥール・カイキらがいる。エヴェラウドも左サイドでプレー可能で、多士済々を、相手との力関係や選手個々のコンディションを考慮しながら起用していくことになりそうだ。選手層という点からすれば、左右とも大きな不安はない。
前線も鈴木優磨が復帰し、エヴェラウドもキャンプから好調を維持。2020シーズンに18点を挙げた迫力を取り戻しつつある。さらに上田綺世や染野唯月もおり、水戸戦の終盤には荒木も2トップの一角でプレーした。層は十分だろう。GKもクォン・スンテ、沖悠哉がそろい、盤石と言える。これに対して、やや心配なのは左サイドバックか。右サイドバックは広瀬陸斗と常本佳吾がおり、水戸戦では広瀬が先発、常本が途中交代でプレーしていたが、左は安西幸輝がフル出場。千葉から復帰した右利きの小田逸稀、ユースから昇格した溝口修平がいるものの、安西と2人との経験の差は大きい。小田は千葉時代に左ウイングバックでプレーしていたが、4バックの左でプレーしたのは数えるほど。町田時代も右サイドバックが主戦場だった。左サイドバック歴、さらにJ1でのプレー経験が少ないことも不安材料ではある。場合によっては広瀬や常本を左に回すケースも考えられるが、これら心配の種を早々に払しょくし、小田や溝口がチャンスをモノしてブレイクスルーすることも期待したいところだ。
昨季、鹿島はヴィッセル神戸に勝ち点で4ポイント及ばず4位に終わり、目標としていたACL出場権を得られなかった。上位との差は一見するとわずかだが、ゲーム内容では川崎Fや横浜FMら上位陣にはボールを握られて押される場面も散見し、スタイルのかみ合わせという面はあるにせよ、ビルドアップに長けたチームに対して分が悪かった。結果、順位でも下回ることになった。より確実にポイントを重ねていくために、そして無冠に終止符を打つためには、ビルドアップの改善とチームスタイルの刷新はマストだった。果たしてクラブはヨーロッパから監督を招へいし、変革に舵を切るに至った。
2022年はJリーグ屈指の伝統と実績を持つ鹿島アントラーズにとっての改革元年になる。スタートから監督不在という難しい状況を迎えているが、新スタイル獲得に向けて進むその歩みを止めるつもりはない。