上写真=鬼木達監督がキャンプに持参するのはポットだという。「自分の時間でお茶を飲んだりしています」(写真◎スクリーンショット)
「スピードがまだまだ遅いんですよね」
「暖かいというのは、本当にそれだけで違いますよね」
1月24日に沖縄キャンプをスタートさせた鬼木達監督は、現地の穏やかな気候に恵まれていることを喜んだ。新戦力が加わってさらに強く、楽しく、魅了するフットボールを展開するために、そしてその先に、J1の3連覇とACLの優勝を手にするために進んでいる。
鬼木監督が選手たちに求める基準はどんどんと高くなっていき、「チーム全体としてのスピードをもう一段階、上げていきたい」とキャンプの狙いを話す。
「単純なスピードも大事ですし、いろいろなところでのスピード、考えるスピードだったりパススピードだったりを自分自身も意識していきたい」
それがこのチームをさらに高みに引き上げるために足りないものだと、自問自答の結果として浮かび上がってきたという。
その基準は世界と比較することもできるだろう。昨季まで活躍してきた旗手怜央がスコットランドのセルティックに移籍すると、すぐさまハイパフォーマンスを披露した。先発でデビューしたハイバーニアン戦では圧倒的なパフォーマンスを思う存分に見せつけて、いきなりマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。2戦目のハーツ戦ではおよそ20メートルの弾丸ミドルをたたき込んで、スタンドを狂喜乱舞させた。川崎Fの基準を世界のそれと並べて見比べる、絶好のお手本だ。
「彼がここでやってきたことが出ていましたね。(ベルギーで活躍する三笘)薫もそうですけど、海外に行って変わったというよりは、あれぐらいはやってたよね、とスタッフとも話しました」
川崎Fというクラブの基準が、彼らが戦っているのと同じ場所にあることを示している。
「でも」と鬼木監督は続ける。
「彼らは川崎の中で実力が飛び抜けていたのも事実です。怜央のハードワークは他の選手はなかなかできないし、だからこそこのチームで年間を通じて活躍できていました。彼が向こうで活躍するのは当然という思いもあります。うちの選手も、あれが基準になっていけば自分たちにも戦えるとわかったでしょうし、技術のある選手はいますから、あの強度を意識していけばいいサッカーができていくと思います」
このチームでプレーすることではなく、このチームで飛び抜けたプレーをすることを選手たちに求めているのだ。
「一人でも多く、そうした意識を持てるように取り組んでいくのが私の立場でやることです。高い基準を設定することでサッカーは変わってきますから、自分も意識しているところですし、単純に世界のサッカー見ているとスピードがまだまだ遅いんですよね」
だからこそ、全員にスピードを求めていくシーズンにするのだ。
2月12日には浦和レッズとのFUJIFILM SUPER CUPが待っていて、18日にはFC東京との「多摩川クラシコ」で開幕だ。時間はあるようで、ない。
「キャンプは毎年、予定通りいかないと思っているので、何を重要視するかですね。今回は(始動前に)休みの量を増やしてサッカーをやりたい状況を作って集まってもらっています。意欲的に取り組むパワーがある中で、目一杯の時間と量でやるときもあれば、少し余力を残して考えて練習する時間を作ったりしていきます。自分がやりたいことばかりではなくて、選手たちが自分の体と向き合う時間でもあるので、そのための力をうまく取れるようにと考えています」
あらゆる意味における「スピード」を追い求めて、さらに高い基準を作り上げていく。そんなシーズンになりそうだ。