上写真=瀬古樹は「このチームは本当に基準が高い」と目を丸くする(写真提供◎川崎フロンターレ)
「早く体に染み込むぐらい」
「発見だらけなんです!」
瀬古樹が目を輝かせる。ボールを蹴るのが楽しくて仕方ない少年のように。鬼木達監督が追い求める川崎フロンターレの楽しいサッカーは、プロ選手をも魅了する。
このチームで新加入選手が必ず通る道が「止める蹴る」。瀬古も例外ではない。パスを受けて、止めて、蹴る。言葉にすればこれだけかもしれないが、そこに川崎Fの深淵がある。
「基準が違うな、と改めて感じています。いままでこれが止まっていると思っていた基準が、ここでは止まっているうちに入らない。キャンプ中に早く体に染み込むぐらいできるようにしたいと思います」
鬼木監督からの評価は当然ながら高い。
「横浜FCで見ていた通り、攻撃のときのポジショニングも技術の正確性もしっかり発揮していますし、すごくいいテンポで入ってくれています」
どんな起用法が考えられるか。鬼木監督はまだ決めていないと断ってから、そのマルチタレントを生かす可能性を示唆している。
「インサイドハーフはもちろん、アンカーもできるかもしれません。(橘田)健人もそうですけど、サイドバックやいろいろなところをやっていくことで、本人が気づかなかったものが見えるかもしれません」
そんな成長へのスイッチを押されれば、リーダーシップを持つこともプラスに働くだろう。横浜FCでは昨年、プロ2年目でキャプテンを務めた。
「個人としてまずチームに染まること。難しいところはありますけど、切り替えの部分や球際の激しさを要求されるのは新しい選手だからということは関係なくできますからね。プレーで体現して言葉でも伝える。それは、チームが変わってもやっていきます」
そんな万能性を生かして川崎Fスタイルを身につけた後の姿が楽しみだが、2月18日の開幕戦はFC東京との「多摩川クラシコ」である。相手には明治大の同期、安部柊斗がいる。ここまでの2年で対戦してきてはいるが、「フロンターレの瀬古」として立ち向かうことに新たな意味がある。
「僕個人としてもチームとしても、これまでの対戦とはまた違う形になりますし、本当に楽しみです。ライバル心を持ちながら尊敬する存在です。彼の球際が強いのを知っているからこそ、いなせたら楽しいですよね」
果たして、いきなり開幕戦での出場はあるか。
「ゲームを決める一本のパスやゴール前に飛び出していって、新しい選手として、新しい風を吹き込むかのようにやりたい」
王者にまた新しい魅力が加わりそうだ。