上写真=瀬古樹が決意を持って王者の一員に。「もっといい選手になりたい」(写真提供◎川崎フロンターレ)
「アンカーでも2シャドーでも」
「最初はびっくりしました」
それが、チャンピオンチームから舞い込んだ獲得オファーを聞いたときの印象だという。プロ入りから2シーズン、横浜FCで活躍してきた瀬古樹は「オファーが来るとは思っていなかったので、率直に驚きました」と明かす。
そこからが悩み深き日々になった。
「プロキャリアを始めた横浜FCは特別なクラブです。キャプテンもさせてもらいましたし、降格させてしまったチームから出ていくのは悩みました」
それでも最後は自分自身に真正面から向き合った。
「トップレベルで勝負したい。ステップアップして高みを目指していく。自分の中でチャレンジしたい気持ちがあったので、そこに正直になって決意しました」
移籍するかしないか、振り子のように揺れる心の中で、川崎Fのスタイルを、その中に入ってプレーする自分のイメージを思い描いていた。
「これまでも対戦していましたし、王者のクラブですから試合もチェックしていました。その中に自分が入って、ピッチに立ったらとイメージできていないと移籍を決断できません。去年の戦い方であれば、アンカーでも2シャドーでもできる自信もありますし、これからが楽しみです」
激しさと賢さを兼ね備えるボランチとして、横浜FCではチーム全体を引き締めてきた。幅広いエリアをカバーできる予測能力で相手の攻撃を寸断し、的確なパスで攻撃に転じるスイッチ役になってきた。その色をチャンピオンチームに加えていく。
「自分の中では常に相手に嫌がられるようなプレーをしたい思いがあります。ドリブルもパスもゴールに関わるプレーもそう。それが、大学の4年間、横浜FCでの2年間で成長できて武器になったところだと思います」
それでも、王者の一員として振る舞うために付け加えたいことがある。
「それは明確で、ゴールに関わるプレーです。昨シーズンは1得点7アシストで、アシストは積み重ねられましたけど、直接ゴールできる選手になりたい思いがあります。よりゴール前に顔を出していけるようにやっていきたい」
いつでもどこでも誰でも、ゴールに向かってプレーするのが川崎Fのスタイルだから、「遠慮するつもりはない」という強い意志は的確にプレーに反映されるはずだ。
獲得に当たった竹内弘明強化本部長は「中盤ならどこでもこなせる、ハードワークを惜しまない選手です。非常に芯が強くて真面目ですが、真面目すぎると言っちゃうと、このクラブでやりにくくなるかな」とユーモアを交えて評価している。
瀬古は新体制発表記者会見で、さっそく「深海プロモーション」に登場、深海用潜航服を着用し、深海魚のぬいぐるみを持ってPRに務めるなど、このクラブならではのピッチ外の役割もこなした。
「正直言って、楽しかったです」
ピッチの上でもそれ以外でも、思う存分に楽しむことができるシーズンになりそうだ。