上写真=決勝の舞台でも安定感のあるプレーを見せた西川周作(写真◎小山真司)
支えてくれた2人が結果を出してくれた
最高のサポートだった。広島時代からともに戦ってきた槙野智章は83分にピッチに登場すると、駆け寄ってキャプテンマークを外し、盟友の腕に巻いた。槙野が明かす。
「西川選手が『マキが最後、持っていけ』『攻めていけ』と言ってくれて、背中を押されました」
1-0でリードしている状況ながら後半は相手にボールを持たれる時間もあった。残り10分あまり。槙野は試合をクローズさせる役割を担っていたはずだが、西川は背中を押した。
90分にペレイラに決められて、1-1の同点にされたときには流れが大分に傾いたと思われた。だが、5分と表示されたアディショナルタイムに、西川がキャプテンマークを託した槙野が決めて、浦和は劇的な優勝を飾った。
「本当に簡単な試合ではなかったんですが、最後、有言実行男がやってくれましたね」
西川は同点にされた後の5分間をこう振り返った。「延長も頭をよぎったんですけど、そのときに槙野選手もいましたし、『シュウちゃんどうする?』って。ここで終わらせるっていうところは確認していて第4審判があと5分と提示していたので、5分あれば何か起きるなと思いながら。マキが点を取って、それで終わらせようということを話して、彼がやってくれました」。
引退を決めた阿部勇樹、チームを去る宇賀神友弥、そして槙野とともにカップを掲げたいと話していた西川にとって特別な優勝になった。
「退団が決まっている選手とともに戦うというのは感情的にも難しいところがあったんですが、準決勝同様、やはり頼もしい仲間が僕の近くに居てくれるというのは本当に大きかったし、ファン・サポーターの方の後押しが、そういう感情をふっ飛ばしてくれました。準決勝では宇賀神選手が点を取ってくれて、決勝では槙野選手が決めてくれて。本当にこれまで浦和レッズを支えてくれた2人が結果を残してくれた」
去りゆく選手たちが思いを託したのは若い選手たちだけではないだろう。今年35歳となった西川も長い時間をともに過ごしてきた仲間の気持ちをしっかり受け止めている。
「来季、自分たちにACLの切符を残してくれた喜びを分かち合いたいと思いますし、残された自分たちは浦和の責任を背負って来季も戦わなければいけないと思っています」
進境著しい鈴木彩艶との定位置争いは今季以上に激しいものになるかもしれないが、それは西川も臨むところ。さらに自分自身を成長させることにつながるからだ。仲間に託された『浦和の責任』を先頭立って示すために、これまで以上に大きな覚悟を持って西川は新シーズンへ向かうーー。