天皇杯は12月12日に準決勝を迎える。川崎フロンターレは大分トリニータとの対戦で、きっちり勝って昨季に続く優勝への道を進みたい。1年前はまだアマチュアだった橘田健人は、この1年に急成長ぶりを見せつけて、「我慢」を大事に頂点に立つつもりだ。

上写真=天皇杯はぎりぎりの戦いが続いた。橘田健人のゴールで始まったこの大会、最後も締める(写真◎J.LEAGUE)

「気持ちを切り替えるというよりは」

 1年前の天皇杯は「家で見ていました」と笑う。その当時の橘田健人に、いまの橘田健人の姿を伝えても信じないかもしれない。

 それほどの成長ぶりだ。

「去年の天皇杯は準決勝と決勝の2試合だったので、家で見ていましたね。レベルが高いな、強いな、と思いながら」

 いまはそのチームの中で堂々と主力を張っている。しかも、チーム全体をコントロールするアンカーとして。

 J1では優勝したものの、最終節は2位横浜F・マリノスを相手に先制しながら追いつかれて引き分けに終わった。しかも、長い時間、押し込まれて、主導権を握りきれなかった。反省はいくらでも出てくる。

「自分のプレーをやりつつ、周りを動かすこともオニさん(鬼木達監督)に求められています。練習から少しずつ取り組んでいて、そこもできていければと思っています」

 寄せて奪って展開して、を自分だけでできればいいが、一人だけで生き抜けないのがプロの世界。だから、仲間をうまく使うことがチームの利益になることを学んだ。

「シーズンが始まるときに、これだけスタメンで試合に出られると思っていなかったので、頑張ったなと自分に言いたいと思います」

 9月から10月にかけての、鬼木達監督のいう「勝負の5連戦」はこの人の獅子奮迅のプレーがなければ乗り切れなかっただろう。トータルでは15試合に先発していて、特に終盤は4試合連続のあと、後半のみの1試合を挟んで、そこからまた8試合連続で先発と、2021年に最も伸びた選手と言っていい。

「でも、アンカーというポジションで自分としてはまだ大黒柱としてはやれていないと思うので、もっとこれから頑張ってそういう存在になりたいと思います」

 危険な場所を察知し、体を張り、ボールを奪い、攻撃につなげていった。でも、まだ足りない。その欠落を残り2試合で埋めるつもりだ。リーグ戦からの「切り替え」という意識はなく、地続きで天皇杯に備える。

「天皇杯も優勝を目指してきたので、気持ちを切り替えるというよりは、普通に天皇杯に向けていい形で準備しています。リーグ優勝が決まったあとも全部勝つと意識を持っていたので、天皇杯も勝ちたいと思います」

 まず準決勝は12月12日の大分トリニータ戦。「ボールを持って動かすのはうまいし崩しもうまい印象なので、我慢する時間も出てくると思います。でも、そこでしっかり我慢して、自分たちの持ち味を出せれば」と思い描く。圧倒的に攻め込む展開を狙う中でも我慢に備えるところは、頼もしい「アンカー脳」だ。


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