上写真＝岸本武流（15）が仲間たちと勝利を喜ぶ。最終節にすべてをかける（写真◎J.LEAGUE）
■2021年11月27日 明治安田生命J1リーグ第37節（＠レモンS/観衆6,428人）
湘南 0-1 徳島
得点者：（徳）岸本武流
「大聖がいいシュートを打ってくれたので」
湘南対徳島という残留争いの直接対決、しかも徳島にはここで降格決定の可能性もあったから、にらみ合いのような展開になってなかなか試合が動かないのも仕方なかった。むしろ、湘南の山口智監督も徳島のダニエル・ポヤトス監督も「我慢の戦いになる」と予想していたから、前半のじりじりとした戦いは選手も織り込み済みだっただろう。
それが後半になると、今度は仕掛け合い。それでもともに譲らない展開となれば、効いてくるのはセットプレーだ。66分、徳島がそのチャンスをゴールに結びつけた。
左からのCKで、ニアに選手たちが突っ込んでいく。湘南の選手も遅れまいとマークについてきた。するとファーサイドががら空きになった。岩尾憲がそのスペースへストレートボールを送り込んだ。後ろからそこに走ってきた宮代大聖はリラックスしてそのままボレーシュート、抑えの効いたボールがGK谷晃生を襲い、こぼれたところを岸本武流が蹴り込んだのだ。
「大聖がいいシュートを打ってくれたので、こぼれてこいと願っていたらこぼれてきて、気持ちで押し込んだ感じですね」
まさに気持ちがこもっていた。なにしろ、こぼれ球が目の前に来たとき、岸本は相手に背中からユニフォームを思い切り引っ張られて大きく体勢を崩しながら、それでも必死に伸ばした左足でボールを捕らえて、貴重な貴重な決勝ゴールを決めたのだから。
「やりたいことはやれたと思いますし、みんな慌てることなくいつも通りのプレーができたと思います」
この試合に敗れて、同じく残留を争う清水エスパルスが浦和レッズに引き分け以上であれば降格する条件だった。だが、焦れずに冷静に戦って、この一発で勝ち点36で湘南に追いついた。得失点差で及ばず降格圏の17位のままだが、最終節まで残留の可能性を残した。あの伸ばした左足が、まさに希望をつないだのだ。
「首の皮一枚つながった状態で残り1試合ですが、すべてのファン・サポーターに感動を与えられたらいいと思います」
相手はサンフレッチェ広島。5月に行われたアウェーゲームでは1-0で勝った相手だ。しかも、岸本のゴールで。最終節は清水と湘南の結果次第ではあるが、この日のようにもう一度、気持ちでゴールを決めて勝って、残留を成し遂げてみせる。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE
