上写真=サガン鳥栖戦では今季2度目の黒星を喫した。悔しさは隠さない(写真◎J.LEAGUE)
「2連覇して相手に対策されますし」
11月3日の第34節でJ1連覇を達成した川崎フロンターレ。7日のサガン鳥栖戦ではチャンピオンとして臨みながら、前半で3失点して1-3で今季2度目の黒星を喫した。
「頭をかち割られたというか、もう一度やる気にさせてもらいました」
優勝決定直後の難しい状況とは言え、鬼木達監督の負けず嫌いが顔をのぞかせる。その鳥栖戦では、後半開始から3バックに変えている。その後、4バックに戻すのだが、現状に満足しない鬼木監督ならではの「次の一手」である。
もともと鬼木監督は、選手の特徴を最大限に引き出すためにシステムを選ぶというチーム作りを明かしてきた。言い方を変えれば、選手が一番力を発揮する場所に置いていった組み合わせを数字で表すと4-3-3になった、ということ。今回の3バックも、それで力を発揮できる組み合わせだから、というわけだ。
「2トップ気味になればフォワードが増えますし、3バックなら後ろに力ある選手を多く使うことも可能になったりと、単純に自分たちのゲームの幅を広げることができると思います」
始まりはしかし、この試合ではない。
「これまでも、ゲームの中でのチャレンジとして3枚に近い形で回せるゲームは他にもあって」
明言してこなかっただけで、最終ラインに3人を置く挑戦は、シーズン中から始めていた。アンカーをセンターバックの間、あるいはどちらかの脇に組み込むスタイルも、その一つだろう。ジョアン・シミッチがアンカーを担当している試合では、状況によってはこのパターンが見られた。
「難しいですけど、アンカーはできるだけ落としたくない気持ちもあるんです。アンカーの選手はやはりアンカーが適切で、アンカーが落ちると次にインサイドハーフも、と一つずつ落ちてきます。相手にとって脅威になる選手はそのポジションにいるべきだ、と考えながらやっています」
アンカーが落ちることのデメリットは消しておきたい。だから逆に、そもそも最終ラインを3人にしておくことで、必要な場所に必要な選手が立つことができるようにトライしているわけだ。
「チャレンジしてもらっている選手もいて簡単ではありませんが、選手もいろいろなことへの頭の柔軟性を持てると思います。この前(鳥栖戦)もそうですけど、ちょっとした変化で相手が混乱する状況を感じていたということで、自然にできるようにやりたいと選手も言っていました」
大事なのはシステムではなく、その瞬間に最も適した場所に選手が立って、それが3バックに見えても4バックに見えても2バックに見えても、相手を押し込んでいけるのであれば流動的に動いていい。その共通認識があるのは大きい。
それでも、一筋縄ではいかない。だから、自然にできるようになるための最初の一歩として、あえて3バックと明示することで理解を進めるという狙いがあった。
「4-3-3を軸にですけど、相手によってシステム自体を変えるのかゲームの中で変えていくのかも含めて行っているところです。だから、メリットは柔軟性ですかね。2連覇して相手に対策されますし、経験の意味も含めて進めています」
どこか特定のヨーロッパのクラブにやり方を想定しているわけではなく「いいとこ取りで」というのが鬼木流だが、選手もJ1の残り3試合と天皇杯に向けて、3バックへのトライを楽しんでいると見ている。
「活気がありますね、チャレンジしてくれているので」
連覇をしても日々進化。Jリーグを席巻してきた川崎Fが次に向かうのは、2022年の3連覇とAFCチャンピオンズリーグ制覇だ。その準備に早すぎるということはない。