浦和レッズの槙野智章が17日、オンラインで取材に応じた。前日にクラブが契約満了に伴い、今シーズン限りでチームを離れると発表していたが、本人の口で経緯と今の心境、10シーズンにわたってプレーした浦和に対する思いを語った。

上写真=オンラインで取材に応じた槙野智章。時折、涙を拭いながら思いを語った(写真提供◎URAWA REDS)

いつか新庄監督のように監督として…

今季限りで浦和を退団することになった現在の心境について、槙野は言った。

「あまり整理はついてないです。11月5日に言われて、時間が経ちましたが、まったく今になっても答えが導き出せていないですし、自分の中で整理がついていない状態ではあります」

 本人にとっても契約満了は寝耳に水だった。前日に発表したコメントでは現役を続けること、別のユニフォームを着て埼スタで戦うことを前向きな姿勢を示していたが、槙野は複雑な胸中を口にした。

「契約のことに関して言えば、すべてをここでお話するのは難しいんですけども、個人的に通達されたときは、まさか自分がという思いは正直ありました。11月5日に受けて、今日は11月17日ですけども毎日、毎日泣いています」

「このクラブが好きだから…。これまでにも長く(チームには)レジェンドの方たちがいますし、僕は他所から来ましたけど、たかが10年かもしれないけれど、僕にとってこの10年はすごく濃かった。大好きなクラブで、ずっと居たかったし、このクラブで引退したかった」

 現役生活を最後まで浦和で全うするつもりでいたという。プロの世界であり、契約は永遠ではない。それでも、ここまで浦和でやってきたこと、これから浦和でやれることを考えたとき、槙野は34歳になった今も、まだまだ赤いユニフォームを着て自分にやれることがあるはずと信じていた。

「クラブから通達された(契約満了の)理由を話すのは難しいですが、クラブが求めることを理解はできなかったですし、今後どう変わっていくのかは見ていきたい。楽しみではあります。クラブが掲げる狙いを達成するなら、『俺がいなくてできるのか?』というのも正直なところで、その狙いとすることを一緒にやりたかったというのが本音。それと本音を言うなら、浦和と対戦したくはないですね」

 2012年、ケルンから浦和に加入したとき、「まずはチームの結束を深めることと、選手とサポーターが一体となって戦うこと。そしてフロント、スタッフも同じ方向を向いて戦うことをやらないといけないと思いました」。だから前年には残留争いをしていたクラブに、ポジティブな空気を生む努力をした。それは「昔、僕が見ていた浦和レッズの強さや素晴らしい雰囲気をまた作り出したい」という思いからでもあったという。勝利のあとに『We are Diamonds』を歌うことを提案したのもそのため。最初は批判的な声もあったというが、それはいつしかファン・サポーターと選手、クラブが一つになる欠かせないものになっていった。

「全てはクラブを強くしたい、ひとりでも多くの方にスタジアムに来てもらいたい、レッズを好きになってもらいたという思いでやってきました。ちょっと勘違いされることもありましたけど、良くも悪くも、そばにいてくれたのはレッズの選手やスタッフやサポーターだった。自分がやったことや言ったこと、行動を起こしたことは、僕の財産です」

 浦和で過ごした10年は「財産」であり「宝物」。取材にではその思いを口にするたびに涙があふれ、何度も言葉に詰まった。

 リーグ戦は残り3試合。天皇杯は準決勝と決勝が残っている。ACL出場権のかかる重要な試合だ。自分が去ったあとのクラブの未来について問われて、槙野はこう答えた。「(浦和レッズは)アジアを代表するクラブになっていかなければいけないし、チームの規模としても、ファン、サポーターの力強さを含めても、アジアを代表するクラブだと思っています。だからリーグでは毎年優勝を争い、毎年アジアの舞台に立ってACLのチャンピオンを狙う、そういうクラブになっていかなければいけないと思っています」。

 現在、指導者ライセンスを取るために勉強中の槙野は将来、「日本屈指のサッカー熱のある街」のクラブに、監督として戻ってきたいという夢も口にした。それこそ北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督のように多くの話題を提供し、もちろんチームを強くするそんな指導者になりたいという。それまでは今しばらく現役を続け、走り続けるつもりでいる。

「まだ整理ができていないと言っていますが、まずは今の現実を受け止めないと前に進めないと思っているので、時間をかけてでも今の自分の状況をしっかりと整理して、今後の自分に何が必要なのか、自分が何を求めているのかをちゃんと考えて、次のステージへ向かっていきたい」

 浦和レッズの槙野智章は、今季でひと区切り。ただ本人が語っているように、きっとその関係はこれで終わりではないーー。


This article is a sponsored article by
''.