上写真=前田大然はこれで21ゴール。2位と4点差に広げ「得点王を意識しないと言えばウソになる」(写真◎J.LEAGUE)
■2021年11月6日 明治安田生命J1リーグ第35節(@日産ス/観衆18,307人)
横浜FM 8-0 FC東京
得点者:(横)前田大然3、マルコス・ジュニオール、小池龍太2、オウンゴール、水沼宏太
「3点しか取れなかった」
これぞ日本代表だ。前田大然が自ら代表復帰を満天下に知らしめる祝砲を高らかに3発。今季2度目のハットトリックに加え、ほかに3ゴールにも絡む大爆発だ。
その秘密は「自由」にある。
この日は、今季の多くでプレーしている左ウイングではなく、最前線のセンターフォワードで先発した。本人が最も望むポジションだ。
「(ポジションは)チームが決めることで、与えられたポジションで結果を残せて良かった」と話したが、「前でのほうが自分ではやりやすい」のも確かだ。
意識したのは「ラインが高めなので裏に抜けていこうと」いうことだった。先制点となる1点目はまさにそれ。カウンターをサポートしてセカンドボールを拾い、一気に裏のスペースに持ち運んでから決めたもの。GK波多野豪に止められながらもそのままボールがこぼれてきた幸運はあるものの、左足で力強く射抜いた。
21分にマルコス・ジュニオール、24分に小池龍太が追加点を挙げたあとの自身2点目は、41分のPK。「真ん中に蹴ったけれど横にいってしまった」と意外な「キックミス」を明かしたが、「みんなが蹴らせてくれました」と感謝すると、ハーフタイムを挟んで後半開始早々の48分にはハットトリック完成。左からのティーラトンのクロスに、GK波多野の前に入ってジャンプ、ヘッドでたたいたボールはバーに当たってそのままゴールに飛び込んだ。
このあと、3点を加えて圧勝したが、前田自身は「3点しか取れなかった」のが実感だ。もっとチャンスがあったのに、という思いからだが、ペナルティーエリア内に潜り込んでワンタッチで落とすパスから仲川輝人が倒される21分のPKを誘ったり、69分の小池龍太の2点目も相手のパスミスを拾って素早く前線のレオ・セアラに預けたところから始まった。84分のオウンゴールも水沼宏太のクロスにニアに飛び込んで、東慶悟が慌てて戻ったから生まれたもの。8ゴールのうち、実に6ゴールに関与している。
「フォワードにいるといろいろ自由に動けるので、ひらめきが出てくるのかなと思います」
このスピードスターは型にはめないほうがいいようだ。
最高の結果を手土産に、日本代表に合流する。ワールドカップ最終予選で勝負のアウェー2連戦。この勢いを、苦境に陥るチームのパワーにしない手はない。
「代表では戦い方が違うし、どこで使われるかわからないですが、出たときに目に見える結果を出したいと思います」
ゴール宣言だ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE