上写真＝渡邊凌磨が右足ボレーで反撃ののろし。だが、勝てなかったことで喜びも半減だった（写真◎J.LEAGUE）
■2021年10月23日 明治安田生命J1リーグ第33節（＠味スタ/観衆11,172人）
FC東京 1-2 鹿島
得点者：（F）渡邊凌磨
（鹿）アルトゥール・カイキ、上田綺世
「感覚で足を振り抜きました」
目の覚めるような、という表現が似合うボレーシュートだった。
75分、左サイドをドリブルで駆け上がった長友佑都が逆サイドのゴールポストの先にあるスペースにクロスを届けた。走り込んだ中村拓海が柔らかくトラップしてからワンテンポ置いてループ気味のボールを中央に戻した。アダイウトンがジャンプ一番、ヘッドでたたき込む…かと思われたが触れずに、ボールはそのまま落ちてくる。
そこに、渡邊凌磨が待っていた。
「アダ（アダイウトン）がシュートを打とうとしていて、ボールが見えない中でのボレーだったんですけど、一応声はかけていました。『OK、OK』と。それで（アダイウトンが）ヘディングする直前に首を引っ込めてくれました」
体のコアを完全に操ってバランスを取り、重心を少し左に倒しながら右足を振り抜く鮮烈のボレー。インステップでミートしたボールは次の瞬間、きれいに鹿島ゴールを割っていた。
「ボールは見えない状態だったんですけど、感覚で足を振り抜きました。それが決まったので良かったとは思いますけど、勝てなかったので、正直、意味がないなと思っています」
これで1-2。反撃ののろしはあげたが、まだビハインドだから喜んでいる暇はない。すぐにボールを戻して試合を再開させたが、結局、ここからスコアは動かなかった。
ディエゴ・オリヴェイラが負傷交代を余儀なくされ、代わって35分にピッチに入った。突然の出場には「ファーストチョイスは自分ではないと思っていた」という。直前の公式戦となったルヴァンカップ準決勝第2戦では左サイドバックにコンバートされ、その後の練習でも左右のサイドバックなどにもトライしていたからだという。だから、「驚きながらうれしかったので、どうにかやってやろうという気持ちはありました」と意欲たっぷりに飛び出していった。もちろん、「チャンスが来たらやれる自信もありました」。
その言葉通りのボレーシュートだったが、だからこそ「意味がない」のだ。勝てなければ、どれだけ素晴らしいゴールを決めても自分で自分を評価できない。
「勝てていない現状があって、そこにはもちろん問題はあると思います。ちゃんと勝ちにつなげられるようにチームとして準備しないといけないと思います。勝ちたい、ではなく、勝てるようにやっていかないと。そこはプロとしてというところだと思うので、100パーセントでやっていきたいと思います」
渡邊にとって初めてのJ1でのシーズンも、残りは5試合しかない。次からは、リーグ戦では3試合出場停止（クラブ独自の制裁としてルヴァンカップ準決勝2試合も出場停止）だったレアンドロも出場可能になる。負傷したディエゴ・オリヴェイラの状態も気になるところだが、ここにきて存在感を増してきた「23」が、激しいポジション争いをくぐり抜けてどこまで青赤を引き上げることができるか。次は「意味のある」ゴールを決めたい。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE
