上写真=橘田健人の存在感がますます上昇中。最後まで走り続けるスタミナにも注目だ(写真◎J.LEAGUE)
「もっとボールを受けて」の自己改革
川崎フロンターレでプレーするということは、素晴らしい先輩たちからフットボールを学ぶことができるということだ。ルーキーの橘田健人にとっては、大島僚太の復帰が最高の喜びであり、大きな刺激になっているようだ。
「僚太さんが帰ってきて、素晴らしいお手本です。日本で一番うまい選手だと思っているので、少しでも自分のものになるように意識して見ています。少しでも多く僚太さんから盗みたい」
目を輝かせてそう語る橘田自身も、強烈な存在感は1年目のそれとは思えないほどだ。インサイドハーフを主戦場にしながら、最近ではアンカーでプレーすることも増えてきて、ときには右サイドバックにも入る。振り返ってみると、今年の川崎Fに橘田がいなかったら、かなり困ったことになったのではないだろうか。
夏に田中碧がドイツへと移籍して不安視されたインサイドハーフのポジションを、しっかりと埋めてみせた。右サイドバックで出ずっぱりの山根視来のバックアップとして、少しだけだが代わりにそのポジションに入って休ませることができた。守田英正が昨季限りでポルトガルに渡り、ジョアン・シミッチがファーストチョイスになったアンカーでも、シミッチの不調をカバーするパフォーマンスを見せている。インサイドハーフと左右のワイドと左サイドバックをこなす旗手怜央とともに、そのマルチロールの才能でチーム力を高めている。
その意味では、いわば救世主。そんな背番号22がいま、大島からの刺激を全身にたっぷりと浴びているわけだ。
「圧倒的にボールを失わないので、相手のプレスが来てもボールが止まるし、ボールを動かすふりをしてボディーフェイントでかわすのは、他の選手と違って圧倒的にすごい」
「ボールを受けたときに相手を見ながら逆を取るプレーや、味方が受けやすいところに出すパス、ゴールに直結するパスができるようになりたい」
大島から取り入れるべきプレーイメージが、どんどんと湧いて出てくる。
守田、田中という日本代表も同じだ。カタール・ワールドカップアジア地区最終予選第4戦のオーストラリア戦で起死回生の勝利をもたらした2人は、川崎FのDNAをたっぷりと日本代表に注ぎ込んだ。
「自分が目指すべき選手たちでもあるので、いつかああいうプレーができるようになりたいと思いました」
そして、川崎Fで彼らが務めたポジションは、橘田が引き継いでいる。
「攻撃の部分で、アンカーで出場する場合はもっとボールを受けてビルドアップの安定の質を高めて、良いボールを配球するプレーをしなければと感じていたので、意識して取り組んできました」
大島僚太、守田英正、田中碧。彼らの特徴を組み込んだハイブリッド版と表現したら失礼かもしれないが、偉大な先輩たちのエッセンスを取り入れたパフォーマンスで、残り6試合にさらなる活躍を期待しても良さそうだ。