上写真=平野佑一は55分、するすると持ち上がって左足でゴールを狙った(写真◎J.LEAGUE)
■2021年10月16日 明治安田生命J1リーグ第32節(@埼玉/観衆10,233人)
浦和 1-1 G大阪
得点者:(浦)江坂 任
(G)パトリック
「外、外、外でテンポを」
シンプル。
平野佑一の姿は、無駄を削いでプレーすることがいかに有効かを教えてくれる。怖がらずにボールを受けて、ワンタッチ、ツータッチで味方に預ける。ただパスを出すだけではなく、きちんと前向きで進んでいける場所にボールを置いてあげる。この夏に加わったばかりでもう、リカルド・ロドリゲス監督のスタイルを体いっぱいに表現している。
ガンバ大阪を迎えたJ1第32節で、浦和レッズはとにかく攻めた。特に左サイドが好調で、山中亮輔、アレクサンダー・ショルツ、汰木康也、江坂任の連係を、柴戸海と平野のボランチコンビが後ろから支えた。だが、攻めても攻めても、ゴールネットが揺れない。
「前半は簡単に外から外して、ヤマくん(山中)のクロスからチャンス作っていたので、そこで決められなかったのが試合を左右する大きなターニングポイントになりました」
アディショナルタイムにPKで先制しながら、直後のキックオフから前線に蹴り出されて逆にPKを献上し、追いつかれる不可思議な結末。そこに、やはりあれだけのチャンスに決めておけば、の後悔が残る。
平野にも大きなチャンスがあった。55分に中盤からするすると持ち上がってタイミングよく相手をかわして割って入り、左足でフィニッシュ。しかしボールはわずかに右に切れていった。
「今日も外してしまったけれど、上(のレベル)に行くボランチはアシストや点の取れる能力がある選手。自分はまだまだ課題が残ります。そこでしっかり点が取れることを意識したい」
反省はディフェンス面にもある。
「最後に放り込んでくるのは想定内だったのにやられたので、チームとしての方向性を決めて後ろを固めたりすることができなかった」
ピッチの中央に陣取るボランチとしては、先制直後にG大阪がキックオフから送り込んだロングボールに対して主体的に備えることができずに、PKにつながったことを猛省した。
ただ、焦れずにボールを回し続け、穴を探り、チャンスにチャンスを重ねた戦いぶりは、リカルド・ロドリゲス監督の言葉を借りれば「勝利に値するもの」。確かな手応えとして次につなげるべきものだった。
「中に固執することなく、外、外、外でテンポを出してはがせれば崩せるし、外に行ったら今度は間からも崩せるというバリエーションを増やしたかった」
「相手がこうだからこうしよう、ということは特になくて、リアルタイムでピッチレベルで考えながらやろうということだったので、今日はそれができたと思います」
平野がピッチで披露する機能美の数々は、いまや浦和の大きな魅力だ。それがさらに磨かれて、このチームをもっと遠くに連れていってくれるだろうと期待は高まる。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE