明治安田生命Jリーグで、月ごとに最も優れたゴールを表彰する「月間ベストゴール」。J1の9月の受賞者は、川崎フロンターレのFW宮城天だった。記念すべきJ1初ゴールがいきなり受賞するというインパクトは絶大だが、それにふさわしい一撃だ。劇的逆転ミドルを打ったその瞬間に考えていたことをじっくりと聞いた。

上写真=宮城天が90+4分に突き刺したミドルシュートで鹿島に逆転勝ち。川崎Fを危機から救った(写真◎J.LEAGUE)

自分が決めるんだとずっと考えていた

――9月の月間ベストゴール、おめでとうございます。9月22日のJ1第32節・鹿島アントラーズ戦で決めたJ1初ゴールがいきなり受賞とは、素晴らしいですね。

宮城天 そうですね、本当にありがたいことです。

――解説の福田正博さんもその瞬間に思わず「おお!」とうなった素晴らしいゴールでしたが、そのときの感触はまだ右足に残っていますか。

宮城 残ってます残ってます! あそこまでいいシュートはなかなかないですし、まったく同じというものはできないと思いますけど、無回転のシュートはまた打てると思います。

――1-1で迎えたアディショナルタイム、ゴール前へのロングボールを相手選手がはじいて、こぼれ球を脇坂泰斗選手が拾い、宮城選手に預けると、右に持ち出してシュートを放っています。これは相手にブロックされたのですが、いい感触だったようですね。

宮城 シュートが入るか入らないかは感覚の部分もありますし、実際に試合で打ってみるとその日の感覚がわかるんです。その1本目を打ったことによって、入りそうだな、という感触がありましたし、その流れからもう一度シュートまでいけましたから、他の選択肢を考えずに自分で打とうと思えました。

――1本目のシュートのこぼれ球を家長昭博選手、山根視来選手とつないで、再び自分の足元に帰ってきました。

宮城 相手が疲れていて足が止まって、ほとんどフリーの状態で打ちましたけど、そういう場面は普通はなかなかないですよね。ただ、入るか入らないかは別にして、あそこでパンチのあるシュートを打つ自信はありました。

――カシマスタジアムのピッチは緩んでいたと思うのですが、それでも強いシュートを打てました。

宮城 流れの中からだったら軸足が滑ることもあったかもしれないですけど、ワンステップシュートだったので、あまり関係なかったですね。

――ボールを受けてから一瞬、時が止まったかのように、相手選手も宮城選手も動かない一拍があったようにも見えました。

宮城 その前に周りを見て相手の状況やスペース、ゴールなど全部、状況判断した中でああいうトラップをしたので、パンチのあるシュートに自信はあるから打てば入るだろうという感覚はありました。あの時間にクロスとかパスという中途半端な形でプレーしたくなかったし、自分が決めるんだとずっと考えていたので、間が空いたというよりは、トラップして自分のベストの状態になるのに時間があった、ということだと思います。相手が寄せてきていなかったですから、それでそう見えたのかもしれません。

――小林悠選手、知念慶選手、脇坂選手もペナルティーエリアの中にいました。

宮城 それも分かっていましたし、クロスを上げてもいいんだろうけど、1本目のシュートを打つ前に(脇坂)泰斗くんからもらったあたりからはもう、それは考えていませんでした。

――寄せてはこなかったけれど、目の前に相手選手もいました。気にはなりませんでしたか。

宮城 とっさの判断ではありますけど、終盤という時間帯で勝たなければいけないし、1本目のシュートがあったからこそリラックスして打てたんですよね。カットインしてしまうと前にいた相手に詰められて打てなかったと思います。右側を通せばいけるという感じで、無回転は狙っていたので、いいところに飛んでくれと蹴りました。

――無回転だとブレ球になって、蹴った本人もコースが読みにくかったりしませんか。

宮城 無回転は狙っていたけど、ブレ球は狙っていないんです。というか、狙えないです。無回転で貫通力があるシュート、というイメージなんです。あのシュートはブレましたけど初速が速かったと思います。伸びていくシュートではないと入らないと思っていて、高校生の頃から練習していましたし、ブレ球よりもパンチ力、貫通力ですね。

――無回転を狙う、というのも難しいと思いますが…。

宮城 でも実はこのシュート、試合では使えないと思っています。例えばボランチの選手には有効かもしれないんですけど、僕は前線なので、最近はこのシュートを重要視していなかったというか、意識的にトレーニングしていなかったんです。だから、高校生の頃や去年の練習の成果だと思います。

――コツはどんなところにありますか。

宮城 僕の場合、普通に蹴ったら無回転になるんですよ、ずっとその蹴り方で練習してきたから。ストレートで打ったら全部、無回転になります。

――原点はどこにあるでしょう。

宮城 高校生の頃から意識してきましたけど、最初は筋力がなくてボールにパワーが伝わりませんでした。お尻周りの筋力トレーニングをしたり、あとはやはり1日に何百本もシュートを打つことですかね。シュートを打つことが好きだし、自主練もそれぐらいしかしていないので、たくさん打った賜物です。

――やはり、お尻の筋肉が物を言うんですね。

宮城 あとは、ももの前ですかね。フロンターレのユース時代から踏み込みが一番大事だと教わってきましたし、強く打たなくても踏み込みがしっかりしていれば強いボールが飛ぶので、バランスも含めて強化しています。


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