上写真＝櫻井辰徳がJ1初先発を果たした。記念のゲームで攻守のバランスとシンプルなプレーを心がけていた（写真◎J.LEAGUE）
■2021年9月29日 明治安田生命J1リーグ第28節（＠等々力/観衆4,932人）
川崎F 3-1 神戸
得点者：（川）レアンドロ・ダミアン、オウンゴール、家長昭博
（神）武藤嘉紀
「バランスを取る役目をしっかり果たした」と三浦監督は評価
ヴィッセル神戸の高卒ルーキーに、J1で初めての先発出場のチャンスが巡ってきた。しかも、首位の川崎フロンターレとのビッグゲームだ。山口蛍が負傷で、セルジ・サンペールがコンディション不良で欠場。レギュラーボランチが2人揃っていない代わりに、櫻井辰徳は大崎玲央と並んでピッチに立った。
三浦淳寛監督は「ミスは構わないので、思い切り楽しんでほしい」と試合前に伝えていて、「前半は攻守のバランスを取る役目をしっかり果たしたと思います」と評価した。その前半は13分に武藤嘉紀のゴールで先制したこともあって、川崎Fを押し込む形でプレー、櫻井もシンプルにボールをつないでビルドアップのリズムを生んでいた。
ただ、プレーは57分まで。
「最初にメンバーが発表されたときは素直にうれしい気持ちもありました。ただ、セルジとか蛍さんがケガをしていない中で、勝ちたいという思いでピッチに立って、相手はフロンターレだから通用しなくて当然というか簡単な試合にならないのはわかっていました」
初々しいが負けん気も強い。だからなおさら、逆転負けに悔しさが募る。
「ピッチに入ってやってみて差を感じて、上にいくためにはこういう相手と対等かそれ以上にやらないと厳しいと痛感しました」
それがプロ1年目の実感だった。特に後半は開始から川崎Fがピッチのあらゆる場所で猛然とプレスをかけてゴールに迫ってきた。
「後半のファーストプレーでサイドをえぐられてピンチを作られたので、チームとしての入り方もそうですし、自分も前半が終わってホッとしてギアを上げられなくて圧力にやられてしまいました」
マルシーニョに右サイドをぶち抜かれて、川崎Fの本気を感じた。56分にPKで同点とされると、攻撃にギアチェンジするために佐々木大樹と交代となった。その後、さらに2ゴールを失って逆転負けを喫した。
「ルヴァンカップと（J1デビューとなった前節の）エスパルス戦で途中から入って通用して、自信を持ってこの試合に入ったんですけど、後半は10分ぐらいしか出ていないけれど向こうがギアを上げてきたのがこれまで経験したことのないレベルでした。驚いたと同時に、こういうプレッシャーをはがせないとJリーグでやるのは厳しいのではないかと素直に思います」
日本のトップクラスのすごみを、ルーキーイヤーに肌で感じることができたのはポジティブな要素だ。AFCチャンピオンズリーグに出場できる3位に入るためには痛い黒星になったが、櫻井が経験した「トップとの距離」は神戸の未来のために大きな意味を持つはずだ
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE
