上写真=66分に同点ゴールを決めて、旗手怜央がこの喜びよう。リーグ戦では4月29日の名古屋戦以来4ゴール目に(写真◎小山真司)
改めて「結果がすべて」の覚悟
「僕のボールロストからの失点でした。どうにかして流れをもってきたい思いがありました」
旗手怜央には意地があった。左サイドバックとして先発して迎えた15分、自陣で茨田陽生に寄せられて引っ掛けられ、そこから一気にカウンターを浴びて先制を許した。このまま黙っているわけにはいかない。
「どこかでインサイドハーフでプレーする時間が来ると思っていたから、どこを狙えばゴールが入るか(前半から)意識していました」
0-1で折り返した後半開始から、左インサイドハーフに入った。すると、いきいきとボールを引き出し、さばき、ゴール前に出ていって一気に押し返すアクションを連続させていった。そして、66分だった。脇坂泰斗が左から右に振り、ボールは山根視来の足元へ。その瞬間、ペナルティーエリアの外から一気にゴール前にスプリントをかけて入っていき、山根からのパーフェクトクロスにジャンプ、しっかりヘッドでとらえてゴール右に優しく送り込んだ。
「バックラインと中盤の選手のスペースが空いて、ときどき戻れないと話を聞いていたので、そこをうまく突けた得点シーンかなと思います」
スカウティングを生かして1-1とすると、90+4分には知念慶が劇的な逆転のヘディングシュートだ。これも始まりは旗手の素晴らしい判断からだった。マルシーニョが左からクロス、相手にクリアされたボールにいち早く反応したのが背番号47だった。
「あの試合に限ったことではないですけど、セカンドボールを拾うのは真ん中で求められるプレーです。インサイドハーフをやってからスタッフから口酸っぱく言われていたことですけど、そういうシーンがゴールにつながったのはよかったですし、まだまだできる部分はあるので、ああいう結果につながってうれしかったです」
拾ったボールをそのままの勢いで左前に持ち運んだが、相手3人に前に立たれてスローダウン、しかしその間を通して中の脇坂につなげたことで、逆サイドの家長昭博までつながって、そのクロスを知念が決めたのだった。奪って突破を図って、さらにその次の判断が的確にできたところに大きな自信を感じている。
「(左に出たときに)クロスを上げようと思ったんですけど、相手が粘り強く対応してきたので、しっかりキープして相手のラインを一回下げさせるところまで考えていました。切り返してから一気に3人が寄せてきたけれど、慌てることなくパスコースを探しながら(脇坂のところに)ボールを置ける判断ができて、それが結果に出て、一つひとつ判断できたことが良かったと思います」
そんな充実のプレーから数時間後、海の向こうではベルギーリーグで三笘薫と三好康児が対戦し、イングランド・プレミアリーグでは冨安健洋がアーセナルの一員としてトッテナムとのノースロンドンダービーで活躍、勝利に貢献した。東京オリンピックで戦った仲間たちに近づくために、刺激が入る。
「Jリーグと世界ではまったく力強さやレベルが違っていて、いまの僕のプレーはその指標になるとは思っていませんが、一緒にやった選手がああいう舞台で戦っているのは刺激になります。すごいなと思う部分もありますけれど、いつかは勝てるようにと、そういう両方の思いがあります」
サイドバックとインサイドハーフのマルチロールを軽々とこなし、ゴールを奪い、セカンドボールを回収してチャンスの第一歩になり、勝利を手繰り寄せた。ケガで戦列を離れていた時期に心身ともに整理され、鬼木達監督も「ケガ前よりもいいパフォーマンスを見せている」と目を細める。
改めて「結果がすべて」と言い切る覚悟の世界で、一歩一歩、着実に、高みへと近づいていることを強く印象づけるパフォーマンス。どこまで伸びるのか、興味は尽きない。
写真◎小山真司