最大の目標としていたAFCチャンピオンズリーグで、川崎フロンターレはラウンド16で昨季王者の蔚山現代(韓国)に0-0からのPK戦の末に敗退を余儀なくされた。しかし、チャンスがなかったわけではない。延長戦の2つのビッグチャンスを生んだのは知念慶。これが大きなきっかけになるかもしれない。

上写真=知念慶はPK戦で一番手。しっかり決めて雄叫びを上げた(写真◎AFC)

「しっかりやらなきゃいけない責任感を」

 川崎フロンターレがACLでまさかの敗退。9月14日の蔚山現代戦は0-0のまま120分を終え、PK戦で敗れ去った。今季の最大の目標が消えた。

 試合には負けたわけではないのに勝ち抜けなかったもどかしさの中で、気を吐いた男がいる。知念慶だ。86分に脇坂泰斗に代わってピッチに送り込まれてから、とにかくゴールを目指した。

 実際に最もゴールに近づいたのは知念のフィニッシュだった。延長前半のラストプレーで、家長昭博の左からのFKを逆サイドでジョアン・シミッチがヘッドで中央へ、そこに知念が潜り込んでヘディングシュート。入った、と思われたボールはわずかにGKに触られてバーの上にかき出された。

「来いと思った場所に来て、頭ですらしたんですけど、思いのほかキーパーの正面にいってしまって。もうちょっとたたければ良かったと、いま振り返れば思います」

 チャンスはこれだけではなかった。延長後半に入って116分に、左サイドから鮮やかなコンビネーションで崩しにかかった。長谷川竜也、遠野大弥、橘田健人とつなぎ、続いて受けた家長がワンタッチで浮き球のパスをゴール中央へ。ここで相手を背中でブロックした知念が生かしたボールを、ゴール前に突進してきた橘田がフィニッシュ、しかしゴールの上を通過してしまった。

「アキさん(家長)に入る前からもうダイレクトで自分に入れてくると思っていたので、先に体を寄せてスペースを作っておきました。そこにうまく健人が入ってきてくれて、いい形だったと思います」

 ゴール前の狭いスペースを少しでも広げるアクションが、この人らしかった。

「自分が体を寄せて開けたスペースにボールを置こうと思っていて、トラップが流れてしまったけれど、健人が入ってきたのは見えていたので(自分で打つか橘田に任せるかは)どっちも考えていました」

 ゴールにつながらなかったと断じることもできるが、しかしゴール前で迫力を持ってプレーして威圧することができたのも間違いない。そこにいることが、ストライカーとしての存在意義を示しているとは言えないか。

「チーム全員が気持ちが入っていて、僕もそれを見せられていたのでピッチに入ったら球際をしっかりやらなきゃいけない責任感を感じていました」

 その闘争心がゴール前でのパワーにつながった。PK戦では一番手で蹴ってしっかり決めて、力強いガッツポーズで仲間を鼓舞した。それでもこのACLの冒険は終わることになった。ただ、知念という個人の視座から見渡せば、一つの分岐点になるのではないだろうか。

「シーズンも終盤になってきて、移籍で抜けた選手のこととか下の順位のチームのこととかいろんな雑音が聞こえてきますけど、より自分のプレーに集中して貢献するべきだと思いますし、僕は立場的にはサブが多いのでチームのために終盤にかけて走らなければいけないと思っています。残り試合は少ないけれど、常にいい準備して少しでも貢献できるように頑張っていきたい」

 延長戦でのプレーは、知念のハートに火をつける目覚めのビッグチャンスだったかもしれない。それを証明するために、残り試合でがむしゃらに走ってゴールを狙う背番号20の姿が見られるはずだ。


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