8月28日に行われた明治安田生命J1リーグ第27節で注目だったのが2位横浜F・マリノスと5位鹿島アントラーズの上位決戦。15分、30分と効率よくゴールを重ねた鹿島が得意の堅守に引き込む形で積極的に守りきって、攻撃自慢の横浜FMを完封。5月のホームゲームに続いて勝利を収めた。

上写真=上田綺世が2点目を決めて優位に。バースデーゴールで勝利を引き寄せた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年8月28日 明治安田生命J1リーグ第27節(@日産ス/観衆4,829人)
横浜FM 0-2 鹿島
得点者:(鹿)荒木遼太郎、上田綺世

画像: ■2021年8月28日 明治安田生命J1リーグ第27節(@日産ス/観衆4,829人) 横浜FM 0-2 鹿島 得点者:(鹿)荒木遼太郎、上田綺世

「フラストレーションがたまってしまった」

 どれだけ多くの美しいチャンスを作っても決まらない日があれば、2度の決定機を2度とも決めきってしまう試合もある。

 J1第27節、2位の横浜F・マリノスが5位の鹿島アントラーズを迎えた上位決戦。横浜FMは4連勝中で、この間、16得点。5月15日に敗れたあとは13試合負けなしで11勝2分けと絶好調だ。そして、最後に負けた相手が、この日の相手、鹿島アントラーズだった。

 その鹿島が、勝負強かった。

 右サイドの自陣最奥からのFKをGK沖悠哉が大きく蹴り出すと、そのボールが転々と前線へ抜けていく。追いついた土居聖真がそのままクロスを送ると、荒木遼太郎がヘディングシュート。鹿島が15分にあっけなく先制した。

 30分にも鹿島が決める。自陣ペナルティーエリア付近からディエゴ・ピトゥカがドリブルを開始、そのままするすると一人で右へ持ち出していくと、上田綺世の走るタイミングに合わせてスルーパスを送った。そのまま上田が右からゴールに一直線、右足アウトでGK高丘陽平の股下を抜いてゴールに送り込んだ。

 横浜FMも鹿島も積極的なハイラインを敷くから、全体に非常にコンパクトなスペースの中での戦いになったが、失点のシーンに象徴されるように横浜FMはなぜかボールへのアプローチが弱め。その分、広大な裏のスペースを横浜FMが攻略できず、逆に鹿島が2度のチャンスをどちらも決めきってしまった。

 後半も横浜FMの攻撃陣に元気がないままだったが、それは鹿島のサイドバックの貢献が大きいだろう。横浜FMのスピード自慢のサイドアタックも、右ウイングの仲川輝人を永戸勝也が、左ウイングの前田大然を常本佳吾が徹底的にチェックしてなかなか自由を与えない。結局、このまま鹿島が水をも漏らさない守備で最後まで引き締めて、逃げ切りに成功した。

 相馬直樹監督が何より強調したのが、選手たちの「助け合い」の意志だ。「早い時間にリードして、守りたくなってズルズル下がる時間もありましたが、選手たちが助け合いながら、マリノスさんの高い攻撃力に対して粘り強く体を張って、勝ち点3を持ち帰ってくれた選手に感謝したい」と振り返り、「そのことがチームを率いていて一番うれしいこと」と、カバーリングの意識を強く保ったまま戦い抜いた姿勢を高く評価した。

 横浜FMは攻撃陣が面白いようにゴールを決めてきたここまでとは打って変わって、ノーゴール。これは4月11日第9節ベガルタ仙台戦の0-0以来で、完封負けとなると2月26日の開幕戦で川崎フロンターレに0-2と敗れて以来、2度目だ。ケヴィン・マスカット監督にとっては、来日して初めての黒星となった。

「フラストレーションがたまってしまった内容でした。1点目は自分たちのミスから相手にどうぞと渡してしまったようなゴールでした」

 それでも、チャンスすら作れずにやられっぱなしになるような「完敗」ではない。「外から見れば相手の堅い守備を崩せなかったように見えるかもしれませんが、チャンスはたくさん作ったので最終的に決められるかどうかです」と、マスカット監督が不安が残るような試合ではないとプライドをのぞかせた。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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