上写真=ユンカー(右)は試合後には同じデンマークからやってきたアレクサンダー・ショルツとにっこり(写真◎J.LEAGUE)
■2021年8月25日 明治安田生命J1リーグ第26節(@浦和駒場/観衆4,425人)
浦和 1-0 広島
得点者:(浦)キャスパー・ユンカー
関根貴大のフィニッシュのこぼれ球を蹴り込む
「ザ・ストライカー」な一撃だ。キャスパー・ユンカーの今季8ゴール目は、15分に生まれた。
平野佑一が何気ない動作から中盤に空いたスペースにボールを滑り込ませると、そこには伊藤敦樹がいた。縦関係になったボランチのさりげないホットラインが、ゴールを射抜く第一歩になった。伊藤が前を向くとタイミングを合わせて見事なスルーパス、左から中へと走り込んだ関根貴大がさらに内側に持って、右足をコンパクトに振り抜くパワーショットを見舞った。GK大迫敬介がなんとか弾いたところで、ユンカーが狙っていた。
「決めることができてうれしいです。またみんなに点を取れることを見せることできたのは大事です」
右頬骨骨折で8月12日に手術して戦列を離れてから、フェイスガードを装着してのゲーム。その瞬間、大迫よりも少しだけ早くボールに追いついて、自慢の左足で蹴り込む先制ゴールだ。結果で完全復活を祝った。
後半は広島が同点を狙って攻勢を強めてきたために苦しんだが、その背後を取る攻撃が67分に成功しかけた。岩波拓也の長いパスで抜け出し、スピードに乗ったまま左足の前にボールを置いてシュート、しかしこれは左に外れた。
前線からの守備はもちろん、裏抜けのスプリント、ハイボールでの競り合いとタフに戦ったユンカーは、80分でお役御免。この夏に加わった木下康介をデビューさせることになった。チームはこの1点を守りきり、難しい試合に勝利。浦和駒場スタジアムでリーグ戦が開催されたのは、14日のサガン鳥栖戦とこの試合が2009年6月以来となるが、今季加わったばかりのユンカーにも、クラブがこのスタジアムで積み上げてきた歴史がしっかりと浸透していたようだ。
「大事な試合で、この駒場でいいパフォーマンスを見せたいと思っていました。それが良かったと思います」
歴史と伝統の染み込んだ「聖地」に、デンマーク人ストライカーがまた新たな物語を残した。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE