明治安田生命J1リーグで川崎フロンターレが今季初の2試合連続ドロー。それだけで足踏みと見られてしまうのは、いまだ無敗の強さゆえだろう。横浜F・マリノスが勝ち点4差に迫ってきているが、攻撃サッカーで魅了し続ける2チームが優勝を争う状況を、鬼木達監督はどう考えるだろうか。

上写真=広島戦を1-1で終え今季初の2試合連続ドロー。鬼木達監督は「メンタルで片付けたくないですが、そこが重要」(写真◎J.LEAGUE)

「思い切りやればいいよ、と伝えました」

 J1第25節のサンフレッチェ広島戦で引き分けて、旗手怜央が心底から悔しさを表していた。鬼木達監督は試合後、その姿を見て「単純に悔しいのだと思います。1人で何か背負っているのかもしれないですが、何かやってやろうという思いが強いのかもしれない。それは良い面でもありますが、1人で抱えるものではない。そこは自分も交えて話したいと思っています」と振り返っていた。

「実際に話しましたよ」と鬼木監督。「試合後にバスでホテルに着いてすぐに」と、選手の様子を観察しながらすぐに声をかける気配りは、さすがのリーダーシップだろう。

「彼のシンプルな思いとして、勝てなかった悔しさがありました、ということでした。試合後の会見でも言いましたけど、いろいろな人の思いを背負いすぎずて『やらなければ』ではなくて、そこを考えるのは僕の仕事なので、自分のプレーに集中して思い切りやればいいよ、と伝えました。オリンピックを経験して勝つことの重要性をすごく感じて帰ってきたので、1試合に対する思いがすごく強く出ていると思いました。そこはポジティブにとらえていいところですが、力みすぎずにやらせたいと思います」

 東京オリンピックではスペインとメキシコに敗れてメダル獲得を逃した。そこでともに戦った川崎フロンターレの仲間、田中碧と三笘薫がヨーロッパに旅立った。さまざまな思いが重なり合ったとしてもおかしくはない。

 それに、シーズンは中盤から終盤へと差し掛かるタイミングで、2試合連続のドローは今季初めてだった。だから勝ちたかった、という思いだったし、横浜F・マリノスも勝ち点4差に迫ってきている。

「感動させられるゲームをしたい思いがあって」

 その横浜FMも「アタッキングフットボール」の旗を掲げて快進撃中だ。上位2チームが攻撃的な思想を全面に押し出して覇権を争うことは、Jリーグの発展を考える上でとても重要なことではないだろうか。

「見ている方を喜ばせる意味ではすごくいいことだと思いますし、自分たちもそういう思いでいます。もちろん、勝つ確率が高いと考えているからではありますが、その先には支えてくれている人、見ていてくれる人がいるわけです。そういう人を感動させられるゲームをしたい思いがあって、それが『ゴール』だと信じているのでそうしています」

「マリノスも、相手がどうこうではなくて自分たちのサッカーを進めることがすべてでしょうし、お互いにこういう順位にいても相手の結果はそんなに気にすることではないし、向こうもそうだと思います。まずは自分たちで自分たちを見せていくことが大事だと思っています」

 ここからは、信念である攻め抜く姿勢をさらにはっきり表現できたほうに軍配が上がるということだろう。もちろん、相手は横浜FMだけではないし、各クラブの多様性が大切であることも重視している。

「同時に各クラブの色があると思っていて、ものすごい守備を見せるチームがあることも、一瞬の勝負のためにいろんなことをみんなで作り上げて決めるサッカーもあっていいと思います。それがクラブの哲学になっていると思いますし、それに合った監督が起用されるわけで、各クラブで進んでいけばいいと思います」

 Jリーグの発展のために、と常々話す鬼木監督にとっては、横浜FMと繰り広げることになりそうな「攻撃サッカー決戦」も、独自色を出して戦ってくるクラブに勝っていくことも、楽しみで仕方がないようだ。


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