上写真=川崎Fは再開初戦は大分に2-0で勝利。鬼木達監督は「この試合をすごく大切にしていた」と勝利を喜んだ(写真◎J.LEAGUE)
競争こそが基準
J1で首位を快走する川崎フロンターレは、左サイドからの軽やかなドリブルでゴールとアシストを量産してきた三笘薫が抜けて、攻撃力をどう維持していくのか。鬼木達監督は「新しいものを作り出していく必要がある」と話して、次なるミッションを進めている。
鬼木監督ももちろん、「抜けたらどうしよう、と考えてはいないです」と移籍で主力が抜けることを前提にチーム作りを進めているわけではない。「でも大前提として、移籍ということだけではなくて負傷などで長期離脱してしまったりする可能性はありますから」と、あらゆる状況を視野に入れながら、準備を怠るようなことはしない。
基準ははっきりしている。
「代わって出てくることができる状態を作るのは、競争だと思っています。もちろん競争を煽るとは言わないけれど、競争意識で伸びていくことがありますし、選手が自分で意識してポジションをつかみにいけるときもあれば、移籍やケガでチャンスが来たときにも力を発揮できる準備をさせたいと思っています。選手であれば当然、自分が調子のいいタイミングで使ってほしいと思うものですが、でもそういうときばかりではないので、心も体も準備しておくことが大事なんです」
だから今回も、左サイドを活性化するのは「競争」だ。「(長谷川)竜也や(宮城)天がいますし、いろんなコンビネーションを増やせるチャンスでもあると思います」と指名した2人のほか、旗手怜央や遠野大弥、そして新加入が決まったブラジル人FWマルシーニョも候補になりそうだ。
さっそく効果は現れている。
「大分戦でも少しずつトライしながらやってきて、得点シーンでは左をえぐれるところもできているので、期待しながらやっていきたいと思います」
77分の追加点がそうだった。最終ラインから回し、左で家長昭博が縦パス。抜け出た宮城天がカットインしていき、その外側を走った登里享平に足の裏で残すとセンタリング、これはクリアされたが、拾った登里がもう一度ファーに送って遠野大弥がヘッドで押し込んだ。鮮やか。
「個人個人のところ、もしくはグループでも、左で絡む選手たちにどういう形で深いところを取りにいくか。例えば、竜也だったり天にパスを出して行ってきてくれ、ではなくて、絡みを増やしていきたいところです。そのためには、誰がどのタイミングでどう走るか。あるいは、サイドバックの役割も当然増えてきます。ノボリ(登里)がああいう形で絡んできたのはいいシーンで、いろいろな選手がいろいろな形でえぐれるところに、つまり、そこの場所に行けるところにいる、というんですかね。詳しくは言えませんけど」
ここで笑ってそれ以上は口にしなかったが、「そこの場所に行けるところにいる」が大きなヒントになりそうだ。最後に取りたい場所がある。そこにたどり着く一つ前のタイミングで、誰がどこにいるべきか。
「そこは自分も含めてパワーを使っていくところだと認識しています」
監督、選手に加えて、コーチ陣も左サイドの新パターン構築にパワーを使う。「コーチの力は本当に大きい。ほかのチームのことはわかりませんが、うちはそこが抜け出ているのではないかなと。うちにいま力がある所以は、そこにあると思います」と支えてくれるスタッフの尽力を称賛する。
そうやって一丸となって「三笘ロス」を埋めて、さらに上回るために、左サイドをどう攻略していこうとするのか。それを観察することが、これからの川崎Fの試合で大きな楽しみになりそうだ。