上写真＝島田譲は3月以来の今季2点目で先制して最高の笑顔（写真◎J.LEAGUE）
■2021年8月9日 明治安田生命J2リーグ第24節（＠デンカS/観衆12,587人）
新潟 2-2 大宮
得点者：（新）島田譲、谷口海斗
（大）中野誠也、西村慧祐
「至って欲がなかったというか」
良かったことと良くなかったことがある。良かったことは、もちろんゴールだ。
アルビレックス新潟が大宮アルディージャを迎えた再開初戦。33分、高木善朗が直接狙ったFKは壁に当たった。拾われたらカウンターを許す。島田譲は思い切ってスライディング、一瞬早く触ってマイボールにして右の藤原奏哉につないだ。
島田はここで動きを止めなかった。そのままペナルティーエリアに入っていって次に備える。すると、右を突破した藤原のクロスを相手がこぼして、利き足の左足の前に転がってきたのだ。足を止めなかったご褒美のように。
じっくりコースを確認して、左足インサイドでゴール左へと送り込んだ。新潟先制！
「フリーキックのこぼれだったと思いますけど、はじかれたボールをマイボールにできてよかったです。クロスのこぼれを流し込めましたが、至って欲がなかったというか、冷静に流し込めたのが良かったと思います」
3試合ぶりの先発出場だった。ボランチとしていつもの左ではなく福田晃斗の右側に立ったが、変わらずビルドアップの出口として機能して、ミドルパスも冴えた。加えて、アクションの連続性を生かしてゴールも奪った。それでも、勝てなかった。
64分にピッチをあとにして、残り時間を仲間に託した。ところが、72分に追いつかれ、アディショナルタイム4分に勝ち越したと思ったら、1分後に同点に追いつかれるまさかの展開になった。良くなかったことはこの引き分け。勝ち点2を取りこぼし、FC琉球に抜かれて4位に順位を下げた。
52分に本間至恩がPKを止められたり、シュートがバーやポストに当たったり、チャンスはいくらでもあった。だから、追加点が取れなかったことに引き分けの理由を押しつけたくなるが、島田の見立てはそれだけではない。
最初の失点は、自陣でパスコースを消されて慌てたところを奪われて一気に運ばれた。2点目は、残り2分で勝ち越した直後でロングボールに競り合いきれなかった。アルベルト監督の言うように、運がなかなか味方してくれない、のだろうか。
「1-0でも勝てるゲームだったと思うんです。相手の攻撃が脅威だったかというとそうではなくて、一瞬のスキや奪われ方とかそういう細かいところで、決めるべきときに決めることも守るべきところで守ることも、上に行くためにはもう一段階細かいところを詰める必要があります」
島田は鹿島アントラーズのアカデミー出身。あの冷徹なまでの試合の運び方を目の前で見て吸収して育ってきた。いまの新潟の鮮やかな攻撃的フットボールに、「1-0でも勝てる」哲学を加えながら残り試合を戦っていくために、島田の存在が不可欠だ。
