上写真=28分、オナイウ阿道はエウベルのクロスにヘッドで合わせて2試合連続ゴール!(写真◎J.LEAGUE)
「自分がいなければいけないところにいる意識が上がった」
動かない、という判断が、勝利を引き寄せるゴールを生んだ。
J1第22節の横浜F・マリノス対アビスパ福岡戦。22分にオウンゴールで先制した横浜FMは、28分の追加点で勝利にさらに近づくことになる。右からのエウベルのクロスをファーサイドでヘッドでたたいたのは、オナイウ阿道。2試合連続ゴールを決めてみせた。
小池龍太が右サイドのエウベルに預けたところが起点。小池はそのまま大外をスプリントで回って走り抜け、これをダミーにしたエウベルは悠々と時間を使って中を見て右足を振った。DF奈良竜樹の背中を取ったオナイウは、GK村上昌謙の姿を見てきっちりと右スミに送り込んだ。
オナイウはこのとき、駆け引きの末に動かないことを選んだ。
「エウベルが持った時点で僕を狙っていたと思います。いいポジションに入れたので、あまり動かずにそこで待っているところにピンポイントで来た感じです」
動かなかったのは、動く必要がなかったからだ。
「センターバックにつかまれないようにポジションを取っていて、エウベルがボールを持ったときには相手も準備ができていたので、動きすぎずに僕のところに蹴ってほしいというポジションにいました」
エウベルがよく理解していただろうことは、センタリングのキックの質で明らかだろう。鼻先で合わせるようなスピードボールではなく、しっかりと相手の頭上を越して落とすボールだった。
オナイウはしかし、ただそこにいたわけではないというのだ。結局は動く必要はなかったのだが、動かなかったのは動くためでもあったという。
「速いボールが来ていたら、自分の前にいるディフェンダーの前に入れたと思います。どちらでもいけるポジションを取っていました」
つまり、球種次第で動くか動かないかを選択できる状態にあったということ。そこでなければいけないという固定化した場所ではなく、流動的に構える余裕があったのだ。ポジショニングのセンスが磨き上げられている。
「クロスが入ってくるときに、自分がいなければいけないところにいる意識が上がったと思います。そのことで余裕とか駆け引きの時間を作れていると思います」
止まることは時間を作ることなり。
52分には再びエウベルの右からのクロスに合わせてヘディングシュート、GK村上に防がれ、こぼれ球に反応してもう一度右足のボレーで狙ったものの、またも村上に止められたシーンがあった。決め切ることができない反省を見せながらも、そこに至るまでの動きには及第点を与えている。
「先にあのポジションに入ってしまったんですけど、動き直さないのではなくて一度外に逃げるようにしたら相手が動いたので、そこで止まったらクロスを上げてくれました。あそこで点を取れるようにしなければいけないですが、動き自体は良かったと思います」
駆け引きで完全にフリーになっていたから、DFとの勝負には完全に勝っていた。こうして一挙手一投足に自信がみなぎるようになり、まさにエースのオーラを身にまとい始めている。ここから1カ月弱の中断に入るのがもったいないぐらい、オナイウは波に乗っている。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE