上写真=大島僚太が第3戦で先発に復帰。最高のフィニッシュで決めたチーム2点目は印象的だった(写真◎ 2021 Asian Football Confederation)
「セットプレーって緊張してあんまり好きじゃない」
心躍るような美しいゴールだった。ACLグループIを戦う川崎フロンターレの第3戦、7月2日のユナイテッドシティ戦で、大島僚太が放ったコントロールショットだ。
34分に三笘薫が先制して迎えた42分だった。左に開いた三笘が中へ横パス、これを受けると大島が反時計回りに中にターンして、中央のレアンドロ・ダミアンに預けて落としてもらい、それを軽やかに右足で蹴り出すと、GKの伸ばした手の先をすり抜けるようにゆっくりとゴール左へと吸い込まれていった。
「思いつきの連続」だったのだという。
「映像で振り返っていないので分からないですけど、ウイングの薫の横につく回数が少なかったのでつくことと、そのときにちゃんとプレーできるように、一度裏に走る素振りをしてマークについている選手と距離を作るところまではイメージしました。でも、ボールが来たときには体が勝手に動いたというか、ターンしたほうがいいなと思って、ダミアンが入ってきたのが見えたのでつけて、とその場その場の思いつきのプレーの連続だったんです」
ひらめきの純度の高さと、それをさらに磨き上げる技術の確かさは、ようやく川崎フロンターレのナンバー10が帰ってきたのだと喜ばせる。
フィニッシュがまた、きれいだった。余計な力の入らない、自然体ショット。
「自分でもそのときどういう感覚だったか…ダミアンが落としたときにすっとどいてくれたんです。本当はファーに打つかトラップするかと思ったんですけど、横に動いてくれたときにゴールネットが少しだけ見えたので、蹴っちゃおう、ぐらいの感じでした」
先制ゴールにもしっかりと絡んでいる。ジョアン・シミッチからのパスを狭いエリアで受けて前を向き、右足で止めてそのすぐ次のステップで左足で送り出し、ペナルティーエリアに入ってきた三笘にパス、三笘のシュートが相手に当たってCKを得る。この右CKをニアゾーンにぴたりと合わせ、谷口彰悟がヘッドで流して中央で三笘がヘッドで押し込んだものだった。
最初の三笘へのパス、意外にもミスだったのだという。
「あれは僕のミスです。ジョアンからパスが来ると思っていなかったので、準備できていなかったんです。準備して先にワンタッチで出してあげられればもう少していねいなボールをつけられたと思うので、そこは反省です」
とはいえ、一瞬の遅れも確実な技術でリカバーできる。それが大島の大島たるゆえんだろう。
そしてCKは練習通り。
「セットプレーって緊張してあんまり好きじゃないんですけど、ニアサイドを狙うのはチームとしてあったので、そこに彰悟くんが入ってきてくれてちゃんとファーで詰めて薫が決めて、各々いい役割を果たせたと思います」
2月23日に右腓腹筋肉離れで戦線を離れることになった。ここまでの4カ月は長かった。「早く復帰したいと思ったんですけど、これだけかかってしまって、いままでのケガの中で一番ストレスのたまる長い期間でした」と我慢の日々だった。しかし、ACLで最初の2試合は途中交代で、そしてユナイテッドシティ戦で先発復帰を果たし、1ゴール1アシストの他にも光るプレーを随所に見せた。この日は前半のみのプレーだったが、徐々にプレー時間を伸ばして右肩上がりでトップコンディションを目指していく。
「ゲームに関しては、数だったりシチュエーションをこなしていかないと感覚は戻ってこないな、と感じながらの45分でした。技術的な部分とイメージ、頭の発想の連続は、徐々に試合を重ねないと出てこないかな、ということも感じました」
この時点で、復帰後初ゴールとなった2点目のような素晴らしいゴールを決めるのだ。ここからどこまで魅了してくれるのか、まずはACLでの残り3試合に楽しみは尽きない。