上写真=鬼木達監督はACLで自分にも選手にも言い訳を求めない。勝利という目的を最優先に、中2日の6連戦を戦い抜く(写真提供◎川崎フロンターレ)
「自分も選手も臨機応変に対応していく」
中2日での6連戦。鬼木達監督でさえ一度も経験のない超・超過密日程を前に、川崎フロンターレの面々はリラックスから集中に向かう途上にいる。
6月20日にウズベキスタンに向けて出発し、初戦は26日(日本時間27日)の大邱FC(韓国)戦。鬼木監督いわく、日差しが強くて気温は高いが湿度は低いという気候や環境に少しずつ心と体を慣らしながら、大事な初戦に備えている。
今回はチーム全員が帯同する総力戦だ。ただし、1人を除いて。田中碧が移籍のためにチームを離れた。鬼木監督は残念な思いと背中を押す気持ちを明かした。
「(ACLに向けて)最終的なテストマッチをしたところに碧も参加していたので、タイミングについては申し訳なかったと選手たちには話をしました」
「本人もクラブもいい選択ができればという思いがありました。これは難しい問題で、クラブの事情を考えて、選手が自分の夢をあきらめるのも違う話だと思っています」
「本人とも話しましたが、難しい決断だっただろうけれど、覚悟を持って頑張ってくれと話しました」
頼もしいのは、他の選手の目の色が変わったことだ。
「例えば誰かがケガしてしまったら違う選手が出ていくのと同じことで、今回は移籍という形にはなりましたが、チャンスだと思って目の色を変えてやっている選手が数多くいるんです。頼もしいチームだと改めて思っています。全員がいい状態でいるので、期待のほうが大きいですね」
ACLの前なのに、ではなく、ACLの前だからこそ、チームが強く、大きくなる絶好のチャンス。どこまでも前向きな「陽のメンタリティー」が、アジアのタフな戦いを突破する大きな力になる。
「まずは全員で総力戦で準備します。自分もそうですし、選手も臨機応変に対応していきます。極端なことを言えば、準備しきれないところで本番でいきなりいろいろなことが起きてもおかしくはありません。そこにもしっかり対応することで、チームとしてステップアップしていく、力に変えていく大会にしたいと思っています」
そのためには「言い訳をしないこと」を、選手にも、そして自分にも改めて掲げている。相手はラフに向かってくることも想定できるし、グラウンドの状態も試合ごとに悪化していく。
まずは自分たちの形で進める。しかし、それは手段であり目的ではない。目的は当然勝利。勝利のために必要であれば、別な方法で戦う。その境界線があいまいになることは避けなければならない。
そんな意欲を、大会前のつかの間のリラックスモードで明かした鬼木監督。川崎Fの歴史を変えてきた指揮官が、次なる大勝負に出る日がやってくる。