2021年5月30日、明治安田生命J1リーグ第17節が開催された。等々力陸上競技場では、川崎フロンターレと鹿島アントラーズが対戦。互いに1点ずつを取り合って迎えた後半アディショナルタイム、90+3分に途中出場した小林悠が1分後にゴールを決めて川崎Fが鹿島を下した。この勝利で川崎Fは開幕から20戦不敗というリーグ記録を樹立。鬼木達監督はJ1通算100勝を挙げた。

上写真=劇的な決勝点を挙げた小林悠(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月30日 明治安田生命J1リーグ第17節(@等々力陸/観衆4,958人)
川崎F 2-1 鹿島
得点:(川)レアンドロ・ダミアン、小林悠
   (鹿)上田綺世

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、登里享平(87分:車屋紳太郎)、MFジョアン・シミッチ、旗手怜央(90+3分:小林悠)、田中碧、FW家長昭博、レアンドロ・ダミアン(87分:知念慶)、三笘薫(64分:長谷川竜也)

・鹿島メンバー:GK沖悠哉、DF常本佳吾、犬飼智也、町田浩樹、永戸勝也、MFディエゴ・ピトゥカ(87分:永木亮太)、レオ・シルバ、土居聖真(77分:松村優太)、小泉慶(46分:荒木遼太郎)、荒木遼太郎、FW上田綺世(86分: エヴェラウド)

選手、スタッフ、そしてサポーターの100勝です(鬼木監督)

 前節とはアグレッシブさが違った。川崎Fは出足の鋭さ、球際の激しさ、切り替えの早さで鹿島を上回る。トップ下に小泉を据えて、前からプレッシャーをかけにきた相手を、巧みな位置取りと素早いパスいなしていく。すると、19分、先制ゴールを記録する。敵陣でボールを持った山根が右サイドから中央へ斜めにボールを送る。そこへL・ダミアンが鋭角に走り込み、右足を一閃。ゴールを射抜いてみせた。

 前半は、川崎Fの良いところばかりが目立った。鹿島はプレスがかからないことでリズムをつかめず、攻撃の形をつれなかった。しかし、である。後半、鹿島は流れを一変させる。小泉に代わって白崎を投入。左サイドハーフに入り、左SHだった荒木がトップ下へ移動。すると前半は見られなかった中央から崩しの形ができ始める。

 ゲームを振り出しに戻したのは、61分のことだ。川崎Fのクリアを拾った犬飼がレオ・シルバにつなぎ、さらに白崎へ。後半からピッチに入った白崎は相手最終ラインの前、アンカーの脇にポジションを取った荒木へ鋭い縦パスを送った。

 前節のC大阪戦で決勝点を挙げた19歳のアタッカーは縦パスを半身で受けるとすぐさま裏へ走り出した上田へスルーパス。後半早々のチャンスを相手GKチョン・ソンリョンの好守に阻まれていた上田は、ボールを浮かすようにシュート。オフサイドぎりぎりで飛び出していたため、VARの対象となったが、ゴールは認められ、鹿島が同点に追いついた。

 その後は互いに素早い切り替えを見せるが、なかなかゴールが生まれない状態が続く。相手のミスに乗じて放ったボックス内から放ったL・ダミアンのシュートは枠を外れ、ついぞゴールは生まれないまま、アディショナルタイムに突入。ドロー決着が濃厚と思われたが、突如として等々力劇場の幕が開いた。主役は、90+3分に途中交代でピッチに入った小林悠だ。

 左サイドから長谷川がクロスを入れると、中央で鹿島のCB町田と知念が競り合い、ゴール右にポジションを取っていた小林の前にこぼれてきた。短い時間でも点を取ってくれる選手と、指揮官が期待してピッチに送ったストライカーは、胸トラップでボールを収め、相手DFが詰めてくるよりも早く左足を振り抜いた。登場からわずか1分。小林が劇的な勝利を導く決勝点をスコアした。

「強い鹿島ということで選手が非常に強い気持ちで試合に入ってくれて、見ていて非常に頼もしいプレーが多かった。その中でしっかりと得点できたことはよかった。欲を言えば、2点目3点目が入っていればもっと違った展開になったと思います。後半は自分たちでちょっと難しい時間を作ってしまい失点しましたが、そこから盛り返して選手がやるべきこと、勝つために必要なことをしてくれました。本当に価値ある1勝だし、しびれるゲームでした。選手に感謝したいです」

 鬼木監督はそういって選手を称えた。この試合には監督自身のJ1通算100勝目もかかっていたが、プロ選手としてのキャリアを始めた鹿島相手に成し遂げたことについては「鹿島には感謝しかない。そういう姿、自分の成長を見せられたことはうれしく思います。ただ100勝というのは自分のものではなく、自分の歴史はチームの歴史。スタッフ、選手、そしてサポーターの100勝だと思います。ここからまた1勝ずつ積み上げていくのが大事だと思っています」とコメント。1勝1勝の積み重ねがチームの歴史だと話す指揮官は、節目の100勝を迎えてますます勝利への強い意欲を示した。

 この勝利でチームは開幕から20戦不敗というリーグ記録を達成。前人未到の記録を打ち立て、首位を行く。無敗の中には前節の湘南戦を合わせて4度の引き分けがあるが、その次の試合ではきっちり勝利を収めてきた。狙うのは常に勝ち点3。引き分けさえ良しとしないその強い姿勢が、この日のアディショナルタイムのゴールにもつながっているのかもしれない。

取材◎佐藤 景


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