上写真=リスペクトする鹿島との試合に自身のJ1通算100勝目がかかることになった鬼木達監督(写真◎J.LEAGUE)
鹿島とは歴史が違う。自分たちはまだ積み上げている段階
前節の湘南戦は先行される難しいゲームになった。レアンドロ・ダミアンのオーバーヘッドシュートによる得点で辛くも引き分けたが、「もう1回、原点に帰るというか、自分たちの締めるべきところ、走り切るとか、そこはしっかりやらなければいけない」と指揮官は振り返る。相手はもちろん、リーグ記録に並ぶ開幕から19戦無敗という記録を達成したチームは、気を緩ませることなく戦い続ける難しさとも戦っている。
次戦は、鹿島戦。鬼木監督が現役時代にプロキャリアスタートさせたクラブだ。現在の自分自身の考え方に大きな影響を与えているという。「自分の原点だと思っています。当時、何で強いのかと。自分はそんなに試合に絡めていなかったですが、チームの雰囲気だとか選手の姿勢だとかクラブの姿勢とか、そういうものをすごく学べました。Jリーグ元年、プロ1年目に、鹿島に入れたことが自分のサッカー人生に大きかったと思っています。色んな思いがありますし、そこからこの川崎に来て、成長させてもらった。本当にリスペクトするところが多いです。ただ、勝負にこだわるのが自分の姿勢なので、そこはしっかりとやりたいと思っています」。
指揮官にとっては鹿島戦はやはり特別だ。「どんな状況であろうと鹿島は鹿島であると。そう思っています」。しかも相手の監督はかつてともにプレーし、川崎Fでは監督とコーチとして戦った相馬直樹監督。
「すごく真面目で、分析もされますし、なおかつ熱い。芯の通った人というか、すごく勉強になりましたし、尊敬する指導者の一人です。やっぱり姿勢のところですね。良い時も悪い時も一緒に居させてもらって、すごく色んなものを学ばせてもらいました」
相馬監督は2011年から2012年シーズンの途中まで川崎Fの指揮を執った。そのときコーチを務めていたのが鬼木監督だ。先日の取材時にも、影響を受けた指導者を聞かれた際に、相馬監督の名前を挙げていた。
「(相馬監督が就任して以降)全員がハードワークして一つ一つのプレーにこだわっているという印象が強い。そういうものを改めて引き出しているんだろうなと思います。ベースのところ、鹿島らしさを前面に出してきていると思っています」
相馬アントラーズの印象について、指揮官は答えた。手にしたタイトル数では鬼木フロンターレがまさる。J1優勝3回、Jリーグカップ、天皇杯とすでに5つのタイトルを獲得した。現在の常勝軍団は川崎Fとも映るが、その見立てを鬼木監督は否定した。
「もちろん自分たちも常勝軍団を目指していますが、鹿島とは歴史が違いすぎるかなと。自分たちはまだまだだと思っています。鹿島であれば、いつでも原点と言うか、帰れる場所というか、全員がそれを持っている。自分たちはここ数年、タイトルは取れるようになってきましたけど、まだ積み上げの段階だと思っています。成績もそうですけど、クラブの歴史や、フィロソフィーみたいなものを全員でもっともっと共有していければ、自分たちが思う常勝軍団になっていけると思います。歴史は1日1日の積み重ねだと思うので、しっかりとやり続けることが大切で、それが常勝につながっていく。選手はすごく良い取り組みをしてくれていますし、クラブもいろんなことを後押ししてくれていると感じています。全体の力で今、自分たちも、ここまで来ていると思います」
鹿島というチームに対するリスペクトと、だからこそ倒したいという強い思いを指揮官の言葉は感じさせた。鬼木監督は現在、J1で99勝を記録している。つまり、明日30日の鹿島戦には自身の100勝目がかかる。「99勝目も1勝目も、100勝目も自分にとっては同じだけの価値があるので、何勝と言うよりも勝ちたいという思いが強い」と語る一方で「ただこうやって100勝が注目される中で相手が鹿島というのは、色んな巡り合わせが、この世界にはあるなと感じます」とも話した。
もちろん鬼木監督にとって通過点だが、節目となる100勝目。原点のクラブ鹿島相手に、しかも尊敬する相馬監督に勝って記録することになるなら、これ以上の巡り合わせもないだろう。