上写真=4月の仙台戦で負傷してから1カ月。仲川輝人がついに戻ってくる(写真◎J.LEAGUE)
「慎重に試合に絡みながらやっていければ」
横浜F・マリノスが優勝した2019年は、仲川輝人にとっても大きなものを手にしたシーズンだった。2人そろって15得点を挙げてチームメイトのマルコス・ジュニオールと得点王のタイトルを分かち合い、リーグのMVPに選出された。
それだけに、翌年は納得のいかないものだっただろう。コロナ禍で過密日程となった試合をこなすうちに負傷が重なり、リーグ戦では18試合出場2得点にとどまった。
昨年痛めたのが、右ハムストリングだった。爆発的なスピードを持つゆえに、肉離れの危険性もはらんでいるのだ。重ねて痛めたその箇所は、今年4月にも悲鳴を上げた。第9節のベガルタ仙台戦で右ハムストリングに肉離れを起こし、全治4週間と診断されたのだ。
それから約1カ月。ほぼ予定通りに仲川は戻ってきた。翌日に控えるルヴァンカップの清水エスパルス戦を前にして、アンジェ・ポステコグルー監督は仲川のメンバー入りを明言した。
昨年の分も含めて、期するものはあるだろう。周囲がそう思いきや、本人は涼しい顔をしている。
「それほど葛藤もなかった。筋肉系のトラブルが最近多いので、そういうのを焦らず治すことが一番大事だとメディカルとも話した。スタッフや監督も分かってくれたので、しっかり治すことに専念していました」
そう、さらりと話すのだ。
この1カ月には、去年の反省が活かされたのだという。ただ復帰するだけではなく、ケガを予防するための筋力トレーニングにも積極的に取り組んできた。ピッチに戻って、そのままシーズン最後までプレーするためだ。だからこそ、「リハビリに相当時間をかけた」と、落ち着いて振り返り、また復帰戦を迎えることができる。
復帰後の先のプランも、しっかり描いている。好調の攻撃陣で再び競争に臨むことになるが、「無理して焦ると、またケガを繰り返すことにもなるかもしれない。本当にここ1カ月くらいは、慎重に試合に絡みながらやっていければいいと思っている」と、自分のリズムを大事にするつもりだ。
自他ともに認めるマイペースなウイングは、復帰戦で決めていることがある。
「ピッチに出たら1カ月ちょっとぶりですが、楽しむことが大事だと思う」
エキサイティングな攻撃サッカーに、悲壮感は似合わない。
取材◎杉山 孝 写真◎J.LEAGUE