上写真=広島戦で衝撃の左足ボレーを決めたアビスパ福岡のMF前寛之(写真◎J.LEAGUE)
左足で「当て感」を大事にした
――月間ベストゴール受賞、受賞おめでとうございます。記念品は受け取られましたか。
前 ありがとうございます。トロフィーには『2021年』『月間ベストゴール』『4月』などの文字が入っていて、ああいうものを受け取るのは初めてだったので、うれしかったです。
――素晴らしいゴールが飛び出したのは、1-1で迎えた58分でした。敵陣でボールを拾った前選手が、ドリブルで運んでから右サイドのFWブルーノ・メンデス選手にパス。さらにパスがつながり、DFエミル・サロモンソン選手がクロスを送りました。
前 エミルにボールが行ったとき、クロスが上がってくるので、そのクロスに合わせるために中に入っていくか、こぼれ球に備えて待つか、2つの選択肢がありました。健志くん(FW金森健志)、石くん(FW石津大介)、テツくん(FW渡大生)の3人が中にいるのが見えたので、2次攻撃に備えるのと、あの位置でシュートが打てれば、という判断で待つことにしたんです。
――クロスは味方に合わず、広島のDF野上結貴選手がヘディングでクリアしましたが、その浮き球が目の前に飛んできました。
前 クロスが入ったとき、味方に合わないと思いました。どんなこぼれ球が来るかによって、トラップするか、ダイレクトでシュートを打つかになりますが、いいところに浮き球が来たので、その瞬間に「ダイレクトで打とう」と考えました。
――利き足とは逆の、左足でのボレーシュートでした。ステップを踏んで右足で打つ、あるいは左足で打つのでも、足を振り切って、向かって右側のコースを狙うことは考えませんでしたか。
前 右足で打とうとは思わなかったです。左足で、すくい上げながら落とす感じで。ただ、ポジションが前に入り過ぎたというか、ミートポイントが考えていたよりも少し上になりました。それで振り切ろうとすると、より強いインパクトが必要なので、向かって左サイドに落とそうという判断になったんです。自然に体が動いて、無理せず、焦らずに打つことができたと思います。
――打った瞬間に入ったと思いましたか。
前 しっかり落ちるように「当て感」を大事にして、ベストの形で打てました。ギリギリでポストに当たるかな、という思いもありましたね。ただ、シュートを打つ瞬間は自分でも不思議なくらい冷静でした。
――ベンチに走りながら力強くガッツポーズ。チームメイトにもみくちゃにされていましたね。DAZNの中継映像を見ると、喜びの輪が解けた後も選手が次々と声を掛けています。
前 アウェーでの難しい試合を、チーム全員で戦っていたので、仲間と喜びたくてベンチに走っていきました。勝ち越しゴールでしたし、自分があまり点を取るタイプではないので、みんなが驚きながら祝福してくれましたね。
――これまでのキャリアでのベストゴールですか。
前 はい、ベストゴールです。ああいうルーズボールからシュートを打つ形は、練習でもほとんどやらないので、練習でも決めたことがないゴールでした。
――あの試合は9分に先制しましたが、28分に追い付かれ、その後は押し込まれる展開でした。
前 追い付かれた後は自陣で苦しい時間が続き、前半は何とか1失点で抑えようとピッチ内で話していました。守備も攻撃も、我慢しながらのプレーになっていましたね。
――前選手のゴールが決勝点になり、2-1で勝ちました。試合終了の瞬間も、声を上げてガッツポーズを見せていましたね。
前 終盤は間延びした展開になり、お互いにチャンスがあってヒヤヒヤしていたので、試合終了のホイッスルが鳴ったときは、うれしさと充実感がありました。アウェーは独特の難しさがあり、どうしてもホームとは雰囲気が違います。苦しい内容でも勝ち点を拾ったり、勝利をつかんだアウェーの試合は、チーム全員で勝ち点を取ったという思いが、 より強く湧いてきますね。
――素晴らしいゴールを決めて、知り合いなどから連絡がたくさん来たのではないですか。
前 そうですね。驚きもあり、祝福もあり。友達から「あんなの持ってたのか!」と少しイジりながらの祝福メッセージも来ましたよ(笑)。