上写真=左サイドから時にゲームを動かし、時に落ち着かせて勝利に貢献している登里享平(写真◎J.LEAGUE)
相手の対策を凌駕していく強さ
対戦相手にマークされながらも、ここまでJ1リーグで負けなし。盤石の戦いを見せる川崎Fは、2位名古屋との連戦に連勝し、いよいよ独走態勢に入っている。まだシーズン3分の1を消化したばかりだが、その強さは別格だ。
名古屋との連戦でもクレバーかつ精力的なプレーで勝利に貢献した左サイドバック、登里がガンバ大阪との試合を控える中で取材に応じた。とりわけ興味深かったのは、名古屋戦に向けて何を狙い、何を考えていたか問われた際の返答だ。
「セットプレーは毎試合毎試合、相手のウィークポイントも含めて、本当にスタッフの方がスカウティングをやってくれています。その通りになる回数も増えてきましたし、スカウティングの重要性が出て、感謝しているところです。セットプレーが流れを変えると常々言っていますが、大事な試合では、本当に重要。そういう中で先制点がセットプレーで取れたことは大きかった」
4日の名古屋との第2戦は、初戦で4-0と大勝したあとで迎えた。相手が堅く試合に入ってくることが予想される中で、セットプレーを入念に準備。CKの場面でジェジエウがヘッドを決め、見事にゴールをこじ開けた。オープンプレーからゴールを量産する川崎Fだが、セットプレーも今季の強み。登里が言う通り、名古屋戦でセットプレーから先制点を奪ったことは極めて大きかった。そして、もう一つ強みがある。
「相手はマンツーマン気味でしたが、そういう状況では走り切ること、相手を引き出した後のスペースの使い方が、やっぱり重要だと思います。けっこうボールに対してアグレッシブに出てきていたので、その出てきたスペースをどう使うのかは、初戦も含めて、もちろんどの試合もそうですけど、重要です。そういうところはより突いていきたい。そしてそのスペースにボールが入った後の精度を、もっともっと上げて行けたらと思っています」
マンツーマンの守備は川崎Fの攻撃を封じる一つの手段だ。誰が誰に付くのかをはっきりさせて1対1で渡り合い、攻守の循環を断ち切るのがその狙い。昨年11月のリーグ戦では北海道コンサドーレ札幌が極端なマンツーマンで挑み、勝利を収めた。だが、今季の川崎Fはマンツーマン気味で守ってくる相手が増えることを想定して戦っている。しっかり走り切り、大きく動くことでマークを外し、相手を振り切ってしまうケースが多いのだ。
そして空いたスペースを有効活用して、チャンスにつなげている。名古屋戦(4日)の山根視来のゴールは象徴的だった。パスの出し手の三笘薫が1対1で無類の強さを発揮し、右サイドバック山根は大きく動いて最後はボックス内で受け手となった。相手の対策を凌駕して勝利を重ねているのが、現在の川崎Fだろう。
それでも登里は言った。
「結果的には2勝しましたけど、やはり反省の方が多いですね。無失点で終わるのは大事だったし、自分のサイドからの失点だったので、また次に生かしていきたいと思います」
「毎試合3点以上、複数得点と言っているところで、先制点を取ったあとの追加点を、とずっと言ってきて、それを実践できたのはよかった。ただ、2失点してしまったことのダメージが大きいと思います」
その上、反省も忘れない。出た課題についてはすぐにチームで共有し、確認し、修正して、また次に向かう。驕りとも慢心とも無縁だ。スキらしいスキがまったくない。
登里の言葉は、なぜ川崎Fが強いのかを説明していた。首位に立ってなお、チームはその場に留まることをよしとせず、常勝への道をひた走っている。