上写真=今季は出場11試合で6ゴールと絶好調の家長昭博。まだコンディションは上がっていないという状態でこれだから、逆に恐ろしい(写真◎J.LEAGUE)
「周りから見る自分と自分が見る自分はちょっと違うかな」
できることを一つでも増やしていくことを「成長」と呼ぶが、すでに出場11試合で6ゴールをたたき出している川崎フロンターレのベテランアタッカー家長昭博はいま、「やらないこと」を増やそうとしている。それを「整理」と呼んでいる。
「周りの人に良くなったと言っていただけることをうれしく思いますが、進化していることはそんなにないんです。『やらなくなったこと』はありますけどね。いま、ビルドアップにほとんど関与していないし、やる仕事は減ってきているんです。だから、成長しているというより整理されているという感じで。体は歳を取るとしんどくなるので、そこは素直に受け止めながら試行錯誤しながらやれています」
これまでにJ1で記録したシーズン最多ゴールは、大宮アルディージャでプレーした2016年と昨シーズンの11。もう半分をクリアしているから、キャリアハイへの期待は当然ふくらむ。だが…。
「ゴールが入っているのは周りの方からの基準にはなるのですが、自分の基準ではまだ体が動き出していなくていい状態ではないんです。周りから見る自分と自分が見る自分はちょっと違うかな」
いい状態ではないのに6ゴール。ということは、これからコンディションが上がっていくわけだから、ゴール量産は確定だろう。
「これですべてが決まるわけでもありません」
「質のところは昔からこだわっていましたが、いい意味で力が抜けなければいけない年齢です。出すところ出さないところを考えなければいけない年齢だから、ここというときに力を発揮できるような体と心と頭の準備をしていきたいと思います。抜くという表現は良くないですけど、100パーセントでやらなくていいところは周りに頼りたいと思います」
頼りがいのある後輩が次から次へと出てくるチームだ。心配はいらないだろう。
そんなほどよい「抜け感」で臨むのが、名古屋グランパスとの連戦だ。勝ち点3差で2位に迫る、失点わずか3という堅守を誇るチームだ。
「大事な2試合になるのは重々認識していますし、チームとしても大事に戦っていきたいと思っています。ただ、シーズンの残りは結構あるので、これですべてが決まるわけでもありません。その両方を自分で感じながら過ごしています」
今季を占う天王山の位置づけと周りは見るが、ここでもちょうどいい力の入れ具合、あるいは抜け具合だ。
「名古屋の印象は去年と変わらず、守備が堅い、と言っちゃうと簡単ですけど、全員の意思統一が取れているチームだと思います。コンパクトな中で攻撃も守備もしてくるので、いいチームだと客観的に見て思います。雰囲気も良さそうだし、結果を出していて、難敵だなと」
では、そんな名古屋にどう勝つか。右ウイングとしての役割と「家長昭博」だからこそ求められるものがある。
「変わらずに中に入るときとサイドに張るときを使い分けないと。決まりごとも感覚も試合で出せていければと思っています。監督に求められているのはそういうところだから、ゴールに絡んで感性やアイディアを出していきたいですね」
がっちり堅い名古屋を突き崩すのは、そんな柔らかな感性なのかもしれない。