上写真=「自分たちを越えられるのは自分たちしかいない」と小林悠。2020年以上の成績を残すために戦う(写真◎スクリーンショット)
鬼木達監督も感じる2人だからこその面白さ
小林悠とレアンドロ・ダミアン。川崎フロンターレが誇る偉大なストライカーだ。
4-3-3のフォーメーションで、センターフォワードの席は一つ。J1のここまでの9試合のうち、5試合でレアンドロ・ダミアンが先発して小林に交代、1試合でその逆パターンだが、第6節浦和レッズ戦、第8節サガン鳥栖戦では、鬼木達監督は2人を併用した。レアンドロ・ダミアンが中央、小林が右のワイド。
常に選手の調子の良し悪しをしっかり見極めてメンバーを選んでいる鬼木監督だが、「もともと悠は右をやっていた選手なので、違和感なくできると思っています」と特別なセレクトではないという。
「あの2人で出るとそれだけゴール前に入っていく回数も多くなりますし、点を取りたいという意欲を感じられる2人です。お互いにストライカーなんだけど、見合いながらやっているので面白いんです」
指揮官自らがそう感じるぐらいだから、どれだけフィットしているかが分かるだろう。
小林本人はレアンドロ・ダミアンのことを「大好きな選手です」とリスペクトして、自身が右に入ってともに戦うことの意味を言葉にする。
「昔から右をやるときもこだわらないというか、ゴールを取れる場所に行くという考えでやった方が自分のプレーがうまくいくイメージが強いんです。だから、サイドでプレーするというよりも、ダミアンと2人で中に入ってやってもいいかなと思っていて。もちろん、守備では(センターフォワードと比べて)しっかりと戻らなければいけないという違いはありますけど、あまり気にしないことがいいのかなと思ってプレーしています」
いわゆるウイングタイプの選手ではないから、サイドに張って縦突破に活路を見出すというよりは、ボールに近い場所で関与しながらゴール前に入っていく方が相手にとっては嫌だろう。いわば「偽2トップ」とでも言おうか。右のワイドのエリアは、超攻撃的サイドバックの山根視来や、田中碧、脇坂泰斗といったインサイドハーフが輝く場所に使えばいい。
「同じポジションでも嫌いにはなれない」
レアンドロ・ダミアンが加入した当初はライバル関係。しかし、彼はダイナミズムや強さが武器で、自分は動き出しやコンビネーションが特徴だから、自然に「彼の良さを引き出せればいい」と考えるようになったという。
加えて、「人間性が素晴らしいから、同じポジションでも嫌いにはなれない」という心の動きに出会った。同じようなリスペクトの言葉は、レアンドロ・ダミアンからもいつも聞かれる。だから、いまでは最高のコンビだ。
「お互いに前線で引っ張っていければいいと思っています」
その絆をぶつける次の相手は、FC東京だ。アウェーでの多摩川クラシコになる。
「堅いチームですし難しい試合になると思いますけど、カウンターを得意としているチームなので、相手がカウンターでパワーを出すときに、こちらが攻守の切り替えを早くして奪えば、スペースができてくると思います。即時奪回といいますか、取られてすぐに取り返す部分はすごくできているので、そこからチャンスを見つけていければなと思っています」
どのチームも川崎Fに対して特別な対策を施してくることが多くなっているが、自分たちのサッカーにこだわる、というスタンスは、鬼木監督が選手の意識の深くまで浸透させている。
「一戦一戦、全力で行くのは変わりません。強い相手との対戦が続きますけど、一丸となってやっていくのも変わらないので、普段と同じような気持ちでいきます」
第37回多摩川クラシコ。小林は2019年7月のこのカードで先制点を決め、2点目をアシストし、3-0の完勝の立役者になった。そのとき以来のゴールを狙う。