浦和レッズの流動的なサッカーを機能させたキーマンと言っても過言ではない。3日の鹿島アントラーズ戦で、今季リーグ初先発した武藤雄樹の果たした役割とは何だったのか。前線で消えては現れるプレーが光っていた。

上写真=ボールを引き出すやスペースメイクで攻撃を機能させた武藤雄樹(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月3日 明治安田生命J1リーグ第7節(@埼スタ/観衆9,975人)
浦和 2-1 鹿島
得点:(浦)明本考浩、槙野智章
   (鹿)関川郁万

「チームに重要な存在にならないと」

 鹿島戦は消える9番が、浦和のキーマンとなった。最前線に張っていることなく、1・5列目まで下がることもあれば、サイドに流れることもある。武藤雄樹がこの日に任された役割は、俗に言うゼロトップ。おとりの動きをさせれば、チームで右に出る者はいない。前線にスペースをつくり、巧みに味方の飛び出しを促した。

「流動性のある攻撃をしていこうというプランがありました。僕が少し下りたところのスペースに2列目が飛び出していこうと。それがうまくはまったと思います」

 してやったりだった。1-1の60分過ぎには中盤の位置まですっと下がってボールを引き出すと、すかさず前線へスルーパス。自分の空けたスペースに飛び込んだ明本考浩の足元へピタリとボールを届け、決勝ゴールにつながるPKを誘発した。

 6節までの出場時間は13分。鹿島戦がリーグ戦初先発。悔しさと葛藤を乗り越えて、つかんだチャンスである。3月28日のエリートリーグ初戦で2ゴールを決めるなど、数字でもアピールしたが、それだけではない。

「日々の練習から努力を続けていました。当たり前のことを当たり前をやる。最近、パフォーマンスが上がった理由は、頭の整理ができたことが大きい。当初はゴールを決めてアピールしようとばかり考えていましたが、まずは自分の特徴を出そうと考え直しました。ボールを引き出すこともそう。チームにとって重要な存在にならないといけないなって」

 リカルド・ロドリゲス監督は、その変化を見逃すことはなかった。杉本健勇、興梠慎三をベンチに置いて、ホームの重要な一戦でスタメンに抜擢したのだ。そして、ピッチではしっかり期待に応えた。試合後、指揮官も9番の話になると、自然と頬が緩んだ。

「際立っていいパフォーマンスを見せていたと思う。ボールを引き出し、ゲームの流れをつくってくれた。いい仕事をしてくれた」

 浦和に加入して7年目を迎えている32歳。前線を活性化させる潤滑油として、まだまだ貴重な存在である。デンマーク人の長身ストライカー、キャスパー・ユンカーを獲得したばかりだが、チームを勝たせるフォワードとして、やはり武藤は欠かせない。

取材◎杉園昌之


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