上写真=西澤健太はフル出場で勝利の歓喜を味わった。「主力」としての風格だ(写真◎小山真司)
■2021年3月21日 明治安田生命J1リーグ第6節(@三協F柏/観衆:3,236人)
柏 1-2 清水
得点:(柏)神谷優太
(清)鈴木義宜、チアゴ・サンタナ
「80点ぐらいできたのかな」
西澤健太がついに今季リーグ戦初先発だ。3月21日のJ1第6節、柏レイソル戦でピッチの上でキックオフのホイッスルを聞いた。
「本当にこのチャンスを待っていましたし、ここまで悔しかっだけれどいい準備ができていました。気負わず自分らしくできればと思って入りました」
清水のアカデミーから筑波大での「武者修行」を経て、2019年にプロ契約。ルーキーイヤー後半からポジションをつかみ、超過密日程の昨季はフル回転して全試合に出場した。
それが、ロティーナ監督に代わり、多くの新加入選手がひしめく今季は、リーグ戦ではベンチからのスタートが続いていた。だからこそ、この試合にかける想いは強かった。
その研ぎ澄まされた意欲できっちりと仕事を果たすのだから、たまらない。
雨と風が猛威を振るうコンディションの中ではセットプレーが有効だ。4分の右CK。滞空時間の長いボールをファーサイドに送ると、鈴木義宜のヘディングシュートを導いて先制ゴールをアシストしたのだ。
「チームとして狙っている形があったので、それを遂行しようと蹴りました。風が強いのを計算に入れて蹴ったらいい形で鈴木選手が入ってきてくれて、その向こうにはヴァウド選手もいたので、僕のキックより中の選手が入ってきてくれたことの方が大きいです」
そう仲間を称えるのだった。
続けて28分には左サイドの河井陽介からのサイドチェンジのパスを右サイドでぴたりと足元に収め、外を回った原輝綺を前に送り出すていねいなパス、原が素晴らしいクロスを送ってチアゴ・サンタナの追加点が生まれた。
いきなり2得点を導いて、昨季10アシストを記録した相変わらずの名演出家ぶりを見せたのだった。
「監督としては素晴らしいニュースです。出場機会が限られた選手がしっかりトレーニングして、出番が来たときにいいプレーをするのは、監督に落ち着きを与えてくれて、ポジティブにとらえています」
ロティーナ監督も大満足だ。
西澤自身が手応えを感じたのも、しっかりとタスクに向き合った実感があるからだ。
「今日は明確に役割を与えられて、対面のサイドバックに仕事をさせないことにこだわりました。最後は疲れてボールに行けないときにチャンス作られてしまったので、90分続けたい」
「左利きの選手が出てきたら、中に強い選手がいるのでボールを入れてくるとスカウティングにあったので、入れさせない仕事を与えられました。80点ぐらいできたのかなと思っています」
その甲斐あって、1失点はしたものの、逃げ切りに成功。2-1で開幕戦以来の勝利を味わった。
「最後まで集中して守れていたし、途中から出てきた選手は前線も含めていい仕事をしたと思います。今日はチームの勝利です」
この日の80点から足りなかった20点を積み上げることで、さらなる出場機会の獲得につながるはずだ。
「すべてがうまくいったわけではないし、勝てずに苦しい試合が続きました。しっかり話し合ってコミュニケーションを取ってチームに戦術を落とし込んで、選手からもアクションを起こしたいと思っています」
「もちろん、選手としては試合に出たいです。でも、与えられる役割は毎試合違うので、自分の良さを出して監督にもチームにも求められるようにやっていきたい」
その表情には、チームの一員として力を果たした充実感がたっぷりだった。西澤はいま、「主力級の若手」から「本当の主力」への階段を力強く登っている。
取材◎平澤大輔 写真◎小山真司