上写真=勝つだけではなく、勝ち続けるために底上げが必要。鬼木達監督が作り上げる(写真◎Getty Images)
「そんな簡単なことではない」
開幕5連勝。川崎フロンターレにとってはもはやそれが「当たり前」にも思えてしまうほどの強さだが、もちろんチームの現場はそのために膨大な労力を注いでいる。
Jリーグ連覇、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝、複数タイトル獲得などハイクラスの目標を掲げる2021年。目の前の試合に勝ち続けながら進めるのは、選手層の厚みを増す作業だ。
鬼木達監督の起用法にもそれがうかがえる。谷口彰悟とジェジエウの鉄壁センターバックコンビを、第2節ベガルタ仙台戦と第5節柏レイソル戦では山村和也と車屋紳太郎に託して、仙台戦の1失点に抑えている。新加入選手で言えば、大卒ルーキーのMF橘田健人を積極的にプレーさせて仙台戦では先発起用、MF塚川孝輝もすでに4試合でピッチに送り込み、仙台戦ではFW遠野大弥もスタートから使っている。
シーズン序盤で勝利を重ねながらこれだけの積み上げができているのは、まさに順調そのものに見えるが、鬼木監督は選手層を作り上げるためにどのような青写真を描いているのだろうか。
「(いつまでに完成させるという)期間はないですね。もちろん一番はゲームで使いながらいろいろ試せればいいですけど、そんな簡単なことではないですね」
それはもちろん、実戦はテストの場ではないから。競争があり、勝ち抜いた者がピッチに立つという大原則がある。
「どの選手も思った以上に積極的にやってくれているので、試合に出たら面白いかな、と思う選手は何人もいます。しかし同時に、現状で試合に出ている選手が怠ることなく努力を続けていて、そこは競争だと思っています。単純に使ってあげたいから使えるわけではなく、いま出ている選手が他の選手にチャンスを与えないぐらいの取り組みをしているので、そこはしっかりと自分が見極めながらやらなければいけないと思います」
鬼木監督自身もそれだけシビアに自分の「目」に向き合っている。
「過密日程で試合がある中でもトレーニングでうまく組み込みながら、少し違ったものを見ることができると思っています。だから、トレーニングのところがスタートになりますね。そこでうまくできればと思っています」
新型コロナウイルスの影響でACLのスケジュールが定まらず、東地区では4月21日から5月7日に予定していたグループステージの試合を6月から7月に延期することがアナウンスされた。
「自分たちの力でどうにかならないようなことは、ナーバスになる必要はないと思っています。最終的に決まったらいろいろ考えますし、自分たちはタフに戦っていきたいと思っています」
これでさらなる過密日程も予想されるので、どの選手がピッチに立っても同じようにプレーできる総合力が改めて問われることになる。
3月13日までのリーグ戦5試合でベンチ入りを経験したのは20人。GK丹野研太を除く19人がピッチに立っている。ベンチ入りも経験していない選手は、特別指定選手の松井蓮之(法大)を含めて10人いる。大島僚太、登里享平は負傷からの復帰を目指すが、彼らの突き上げがタイトル獲得の可能性を高めていくことになる。