2021年のオープニングゲーム、新旧王者対決となった試合で興國高から加入した18歳のルーキーがデビューした。横浜F・マリノスの樺山諒乃介だ。前半だけのプレーだったが、積極的な仕掛けとドリブルスキルで見る者に鮮烈な印象を残した。

上写真=ジェジエウと何度もやり合った樺山諒乃介(写真◎小山真司)

■2021年2月26日 明治安田生命J1リーグ第1節(@等々力陸/観衆5,137人)
川崎F 2-0 横浜FM
得点:(川)家長昭博2

Jリーグ王者はすごかったです

 肝の据わり方が、並みのルーキーではない。F・マリノスで高卒ルーキーが開幕戦デビューするのは、2007年の長谷川アーリアジャスール以来のことだが、それもうなずける堂々たる仕掛けを見せた。 左ウイングとして先発を飾ると、まずは18分、非凡の才を示す。

 右サイドで仲川輝人が川崎FのインサイドMF田中碧にプレスを仕掛け、天野純とともにボール奪取に成功すると、そのままボックス左手前に陣取っていた樺山につながった。するとプロ1年目の18歳は、ボックス内へと果敢に進入してみせる。

 だが、ボックス左隅付近で目の前にジェジエウ、田中、そして帰陣した脇坂泰斗が立ちはだかり、一人で突破するのは難しい状況になった。ここで樺山は持ち前のテクニックとアイディアを発揮する。右足の裏でボールの上を触って転がし、即座に左足で中央へパス。ダブルタッチのような動きで相手の間合いを外して見事にボールを通したのだ。やや高さが合わず、天野にとっては難しいパスになったためにシュートは枠外へ外れたが、3人と対峙しながら天野の位置を把握し、しっかりパスを通した樺山の技術は見事だった。

 さらに、39分。樺山がただ者でないことを証明するプレーを見せた。左サイドで扇原貴宏のパスを受けると、ドリブルで持ち上がり、プレスバックで当たりに来た田中を右腕でブロックしつつ、ボックス内に進入。正面から寄せてきたジェジエウと田中の間をすり抜けるようにコースを変えてゴールへ接近した。ゴールエリア付近で中央に送った横パスが味方に合わず、結局、シュートには至らなかったが、昨季のベストイレブンに選ばれた選手2人を向こうに回し、積極的な仕掛けで好機を生み出したのだった。

 結局、この日は前半のみでお役御免となったが、そのプレーで多くの人々に強い印象を残すことになったはずだ。

「それなりに自分もキャンプで手応えをつかんでいたので、メンバーインできたらいいなとは思っていましたが、まさかスタメンが来るとは思っていませんでした」

「やっぱりどんだけ自信を持って臨んでも、Jリーグ王者はすごかったです。Jリーグトップレベルのクラブとの試合は楽しかったのですけど、45分間しか出れていないし、全然、自分の良さを出せなかったので、どんな相手にも良さをしていくという課題が残りました。100パーセントでいいプレーをしたいと思っていても、絶対に自分の良さをつぶされる相手だとは思っていましたけど、チームとしても個人としても悔いが残るゲームになりました」

 いきなり先発デビューも、地に足がついている。課題をしっかり認識し、次につなげたいと言った。

「ドリブルで打開するのとスルーパスやドリブルでチャンスメイクして、ゴールやアシストで得点に関われるようにしたかった。今日は自分にいい形でボールが入ることがそんなにはなかったですけど、前向きでパスを受けられたときに、もっとドリブルで仕掛けていって、一回のチャンスでもそれをゴールにつなげられるようにしたい」

 デビューがJリーグのオープニングゲームで、神奈川ダービー。しかも新旧王者対決。いきなり日本トップレベルを体感したことになるが、この経験は樺山にとって大きなプラスとなるだろう。ここから加速度的に成長することになるのかもしれない。なにせ、本人がこう言っている。

「自分の中にあった、もっと上に行きたいという思いが、この悔しさでもっと強くなりました。次に川崎とやる際に違う自分を見せられたらと思います」

 プレーしたのは45分間だったが、樺山にとっては濃密な時間になった。そして、見る者にとっては、Jに新風を起こすかもしれないハマのルーキーを強く認識する機会となったーー。


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