上写真=渡辺剛がカップを手に安堵の笑顔。最高の勝利でシーズンを締めた(写真◎小山真司)
■2021年1月4日 JリーグYBCルヴァンカップ決勝(@国立競技場/観衆24,219人)
柏 1-2 FC東京
得点:(柏)瀬川祐輔
(F)レアンドロ、アダイウトン
「優勝できたことにホッとしています」
優勝の瞬間、泣いていた。渡辺剛、ルヴァンカップ決勝で柏レイソルを下して日本一!
「去年、リーグ2位で悔しい思いをしましたし、今季はリーグでも結果を残せずにACLでも敗退して、この最後のルヴァンカップで結果を残すしかないと思っていました。優勝できたことにホッとしています」
うれしい、のはもちろんだろうが、安心の方が先に出てくる。プレッシャーがあったのだろう。
「自分自身のことで言うと、今シーズンは苦しいシーズンで、いろいろうまくいかなかったことが多かったシーズンなので、最後にJリーグナンバーワンのストライカーを抑えて優勝できたのは自分にとっても報われたと思えるし、いままでやってきたことが無駄じゃなくなる経験になりました」
キャプテンの東慶悟が7月に右第五中足骨骨折の重傷を負って、ピッチを離れた。代わってキャプテンマークを巻いたのが、副キャプテンの渡辺だった。常にチームのことを優先し、周囲の選手に目を配って、自分のことは後回しにした。その姿勢に自分がチームを引っ張るという覚悟がにじみ出た。しかし、長谷川健太監督は「もう少し自分自身のことに集中してもいいのに」と責任を感じすぎている様子を見て心配するほどだった。
だからこそ、FC東京にとって11年ぶりの、渡辺にとってはプロ初の優勝には、大きな意味がある。オルンガを止めた。それが、自分自身へ贈る勲章だ。
「やっぱりオルンガ選手はスキを与えたら得点を取ってくる選手なのは分かっていますし、どの選手よりも能力があるのも分かっていました。集中してスキを与えないことを意識しながら、相手が嫌がるプレーを意識していました」
「自分のスペースを確保したくて(ボールを)はたいて入っていくタイプだと思ったので、一発目で強くいくことで相手は嫌だろうし、うまくできていない場面が何回かあったと思います。あとは気持ちで何とかしました」
開始わずか10分で、そのオルンガと空中戦で激突して落下したときに右肩を強打した。しばらく身動きが取れないほどで心配されたが、結局は最後まで戦い抜いた。
「最初にやったときはやばいかなと思ったんですけど、ここまで来たら腕がもげてもやると自分の中で決めていたので、もう一度同じ場面があって痛かったんですけど、根性でやりました」
苦しみ抜いたシーズンを象徴するような激痛は試合後も引かないほどで、追って検査するという。大事に至らないことを祈るばかりだが、乗り越えた先に歓喜が待っていた。
「相手もオルンガ選手など攻撃に破壊力があったので、そこを抑えて自分たちも焦れずに1点を取りに行って、という場面で、やはり先制点が大きかったと思います。追いつかれましたけど、自分たちとしては手応えがあったので、精神的な面で先制点が取れたのが今日の勝因なのかなと思っています」
東が67分にピッチを後にしてから、この日もキャプテンマークを託された。優勝の瞬間、その左腕に巻かれた黄色いキャプテンマークが誇らしげだった。