上写真=ホームでJリーグデビューを飾った武田(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月12日 J1リーグ第32節(@埼スタ:観衆14,847人)
浦和 0-0 湘南
「絶対にやってやる」の思いでピッチへ
ファン・サポーターからの期待は大きいのだろう。今季、青森山田高から加入したルーキーの名前がアナウンスされると、埼玉スタジアムに大きな拍手が鳴り響いた。湘南戦でベンチ入りしたMF武田英寿が、指揮官から呼ばれたのは試合終盤。興奮する気持ちを抑えつつ、スタンドをぐるりと見渡すと、感銘を受けたという。
「赤く染まっていて、(僕の)ユニフォームを掲げてくれている人もいました。絶対にやってやる、という思いになりました」
リーグ戦デビューは特別だが、86分からピッチに入ると、すぐさま持ち味を発揮。直後の87分、ペナルティーエリア近くの狭いエリアでボールを受け、巧みなドリブルで相手をかわした。そして興梠慎三へ丁寧なラストパス。ゴールにはつながらなかったものの、得点の匂いを漂わせた。
最大の見せ場はアディショナルタイムだった。興梠のポストプレーの落としを受け、ドリブルでボールを運んで左足シュート。相手GKにうまくセーブされたものの、ゴールまであと一歩に迫った。無得点のまま試合は終わり、スコアレスドローとなったが、本人の顔には充実感がにじんだ。
「限られた時間の中で、ボールに多く触ることができました。チャンスメークもできましたし、シュートを2本打てたのもよかったです。最後のプレーで点を取り切って終われば、もっとよかった。結果が一番ですから。次は勝利に貢献できるようにやりたい」
全試合に絡むという、当初思い描いたルーキーイヤーとは大きくかけ離れたものになっているが、腐らずにトレーニングに打ち込んでいる。リーグ戦の残りは2試合。シーズンはまだ終わっていない。武田は意欲をみなぎらせる。
「自分でも周りから期待されていたのは分かっていました。不甲斐ないと思いますし、悔しさもあります。(ここからでも)この1年、努力してきたものを見せていきたいです」
今季チームが目標にしていたACL出場権には、すでに手が届かない。それでも、ただの消化試合にするつもりはない。試合に飢える19歳は、最後までどん欲にアピールを続けるつもりだ。
現地取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE