上写真=準決勝へ向けた公式記者会見で熱く語る三浦淳寛監督。全員の力で勝ち抜いてみせる(写真◎VISSEL KOBE)
「この大会にかける思いはどのクラブにも負けていない」
いよいよ、決戦が迫ってきた。ACL初出場のヴィッセル神戸が決勝進出を狙う東地区代表決定戦が始まろうとしている。ピッチコンディションを考慮して会場がヤシム・ビン・ハマド・スタジアムに変更されているが、対戦相手は韓国の名門、蔚山。三浦淳寛監督は高ぶる気持ちを抑えつつ、冷静に話した。
「明日の対戦相手である蔚山は非常に素晴らしいチームで、攻撃、守備、両方とも安定感があると思います。難しい試合になると思いますが、我々もずっとこのために準備をしてきました。一つ一つの積み重ねを明日こそ見せる試合だと思いますので、お互いにいい試合ができればいいと思います」
蔚山はグループステージではFC東京と同じグループFで戦い、その東京とは2月11日の第1節で1-1、再開後は第5節で対戦して2-1逆転勝ちを収めている。最終的に5勝1分けの勝ち点16で堂々の首位突破、決勝トーナメントに入ってもラウンド16でメルボルン・ビクトリー(オーストラリア)に3-0、準々決勝で北京国安(中国)に2-0と、この大会でいまだ無敗だ。ここまでの8試合のうち、再開後の7試合すべてで複数得点で全勝と攻撃力が爆発しているのが不気味である。
その蔚山がこの大会の2012年のチャンピオンで、8度目の参加となるのに対し、神戸は初出場。アジアでの戦いにおける経験値の差を指摘する声もあるが、三浦監督はそれを上回る自信を口にした。
「そのプレッシャーはマイナスになるものとは感じていません。クラブとしては初めてACLに参加しているので、チャレンジャーの気持ちで来ています。初めての大会ですが、選手だけではなくクラブの全員のこの大会にかける思いはどのクラブにも負けていない自信があります。いろいろなスタッフが選手が結果を出せるための準備を日本にいるときからやって来ましたから、いろいろな思いを抱えながら躍動して表現することを選手には期待しています」
気になるのが、ケガ人の状態だ。特にイニエスタ。だが、その不安も三浦監督が力強い言葉でかき消すのだ。
「ケガ人が出て影響しないと言ったらうそになります。ただ、連戦は覚悟してきましたし、当然ながらお互いのチームが本気でぶつかりあって戦っていく中でケガ人はどうしても出てしまう可能性があると思っていました。でも、ここからは本当にチームの総力戦になります」
奇縁というか、ここに来て神戸のOBと戦うことになった。蔚山の監督は1998年と99年の2年間、神戸でエースストライカーとして活躍した金度勲だ。2年で27ゴールを挙げてきたパワフルシューター。
「金度勲さんは神戸のレジェンドでもありますし、いいストライカーでした。ドロー(抽選会)のときに少し話をして、Jリーグを離れて日にちがたっているけれど流暢な日本語で話していました。そのときには対戦することは決まっていなかったので、健闘を称えながら明日はいいゲームができると思っています」
しっかりと勝利を収めれば、さらに決勝でも勝てば、金度勲監督もヴィッセル神戸という偉大なるクラブの歴史の一部になることができる。だから、いまさら余計な「恩返し」はしないでもらいたい。
「私は帯同している選手を信頼していますし、誰が出ても戦う気持ちとチームのためにという思いでプレーしてくれています。総力戦で勝つための努力をしていきたい」
三浦監督は選手への信頼をどこまでも貫く。クラブ史上次第の決戦へ向けて、いざ総力戦だ!