ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタが22日の浦和レッズ戦で今シーズン初めて先発メンバーに名前を連ね、フル出場を果たした。試合は0-2で敗戦したものの、個人としては手応えを得たとゲームを振り返った。

上写真=今季初先発でフル出場を果たしたイニエスタ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月22日 明治安田生命J1リーグ第15節(@埼スタ/観衆4,917人)
浦和 2-0 神戸
得点:(浦)田中達也、キャスパー・ユンカー

「いい感覚がプレーできた」

 埼玉スタジアムに静かなどよめきが起こる。神戸のアンドレス・イニエスタはピッチ中央付近をふらふらしながら、ボールを受けるときにはすっと動く。運動量はそれほど多くない。フルタイムでピッチに立った選手の中では、走行距離が最も少ない9.992km。それでも、一瞬でフリーになり、絶妙のスルーパスを通してみせる。

 地上にスペースがなければ、空間を利用。25分には浮き球のスルーパスで相手の背後を狙う。ぎりぎりのところで相手に頭で触られてコースがズレたものの、その精度の高さには目を見張った。ワンタッチパスで密集地帯のわずかな隙間を突くテクニックも圧巻。Jリーグで最も稼ぐ男と言われる元スペイン代表の技術は、まだまだ錆びついていない。後半は見せ場も少なくなったが、今季初めて先発フル出場を果たし、あらためて大きな存在であることを証明した。37歳の誕生日を迎えた5月11日に契約を延長し、意欲も十分。試合後はリモート取材で元気な顔を見せた。

「負けたので、チームとして満足できる内容ではありません。それでも、久しぶりに90分間出場しました。いい感覚でプレーできるところもありました。本来のコンディションに戻っていくためには、いい試合になったと思います」

 スタジアムに訪れたフットボールファンを満足させるだけの妙技は披露した。この日を待ちに待った人は多いはずだ。思い返せば2年半前。18年9月23日、埼玉スタジアムで開催された浦和ー神戸戦は、前売りからチケットが売れに売れた。当日はリーグ戦半ばでは異例とも言える5万5689人の観客が詰めかけた。お目当ての一つは言うまでもなく、イニエスタだっただろう。ただ、この1度目が空振りに終わると、不思議なことに2度目も3度目も当人は負傷で欠場。そして今回、ようやく『4度目の正直』で埼スタ登場は実現した。

 一つ残念だったのは、コロナ禍の影響で入場者数制限があったこと。発表された観客数は4917人。浦和のクラブ関係者も苦笑いを浮かべるしかなかった。「最初のときは5万人以上が来ましたから、この状況でなければ、今回はかなり入っていたでしょうね」。こればかりは来年のお楽しみか。幸いにして、イニエスタの契約は2023年まで延長されたばかり。いち早く新型コロナウイルスが終息し、満員に近いスタジアムになることを祈るばかりだ。

取材◎杉園昌之


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