上写真=3バックの一角で持ち味を発揮した舘(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月12日 J1リーグ第32節(@埼スタ:観衆14,847人)
浦和 0-0 湘南
「シュートを打つ機会を増やしたい」
堂々としていた。3バックの一角に構える舘幸希の身長は173センチ。異端のセンターバックと言ってもいい。右サイドに流れてくる浦和の杉本健勇は187センチ。相手のFWは頭ひとつ分ほど大きかった。
それでも、互角以上に渡り合う。ロングボールが入ってきても、体をガツンとぶつけて競り合い、簡単に負けることはなかった。後半アディショナルタイムに交代で退くまで気を抜かず、5試合ぶりの無失点に貢献。大卒ルーキーは充実した表情を見せていた。
「ラインをコントロールして、コンパクトに保てていたと思います。シュートは何本もブロックできました」
センターバックには、こだわりがあるのだ。日本大学時代はボランチでもプレーしたが、湘南に内定をもらったときから誓っていた。
「この上背ですが、本職のセンターバックとしてやっていきたいと思っています」
今季、ルーキーイヤーながら16試合に出場。9月下旬以降はレギュラーに定着し、日に日に自信を深めている。
「高さがないぶん、クイックネスで勝負しています。意識しているのは、駆け引きして、相手よりも先にボールを触ること」
鋭いインターセプトは、目を見張るばかりだ。相手のパスを予測する能力だけではなく、運動能力の高さも魅力。一瞬で前に出るスピードは際立つ。積極的にラインを押し上げることができるのも、脚力に自信があるからこそ。背後の大きなスペースは、自慢の快足でカバーしている。最終ラインの裏を取る名人にも決定的な仕事をさせず、シャットアウト。浦和FW興梠慎三らを抑えた守備能力は、本物と言っていいだろう。
ただ、本人は課題も見つめている。湘南の3バックに求められている攻撃面での貢献が物足りないのだ。
「ボールを奪った後のパス精度を上げないと。攻め上がって、シュートを打つ機会も少ないので、そこも増やしたいです。ゴール前に顔を出せば、チャンスも出てきます」
お手本は昨季まで湘南でプレーした山根視来である。今季、川崎フロンターレのリーグ優勝に貢献した攻撃的な右サイドバックを見習いながら、まだまだ成長していくつもりだ。
現地取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE、Getty Images