上写真=決勝ゴールを挙げた中村帆高をチームメイトが祝福する(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月12日 J1リーグ第31節(観衆9,755人/@味の素)
FC東京 1-0 広島
得点:(F)中村帆高
・FC東京メンバー◎GK波多野豪、DF中村拓海、木村誠二、丹羽大輝、中村帆高、MF品田愛斗、三田啓貴(85分:平川怜)、内田宅哉、FW原大智、アダイウトン(72分:矢島輝一)、田川亨介(58分:紺野和也)
・広島メンバー◎GK林卓人、DF野上結貴、荒木隼人、佐々木翔、MF茶島雄介(55分:柏好文)、川辺駿、青山敏弘、東俊希、浅野雄也(78分:柴崎晃誠、森島司、FWドウグラス・ヴィエイラ
選手たちは素晴らしいプレーをしてくれた(長谷川監督)
FC東京は主力の多くを休ませたものの、先発11人のうち、木村を除く10人がカタールでACLを戦ったメンバーだった。そのうち6日のラウンド16・北京国安戦でプレーした6人。中村帆、内田、アダイウトンは北京戦途中出場し、波多野、中村拓、原は2戦続けての先発となった。
序盤、FC東京は広島にボールを握られた。押し込まれたところは反攻する形でゲームは進む。D・ヴィエイラ、川辺にシュートを打たれるが、ゴールは許さなかった。30分過ぎからはFC東京も盛り返したが、ネットを揺らせず、0-0のまま後半へ突入した。
前半と同じく、後半開始直後は広島がボールを握られて押し込まれた。ただ、これまた前半と同様に相手は好機を生かしきれずに、次第に流れはFC東京へと傾いていく。田川に代わって紺野が登場して以降は、FC東京の攻撃にリズムが出た。それまで縦に急ぐパスが引っ掛かり、アダイウトンの突進もことごとく止められていたが、紺野が緩急自在のドリブルでボールを運び、広島の守備網に綻びを生み始めると、65分、ついにスコアが動いた。
右サイドに回ってボールを受けた紺野が浮き球パスを相手DFの背後のスペースへ送ると、そこへ内田がタイミングよく走り込んだ。ボックス右から深く進入し、三田へマイナスのパス。そして三田は左へ展開。待っていたのは左サイドバックの中村帆だった。左足を豪快に振り抜き、ゴール左上を射抜いてみせた。
右サイドで紺野がボールを持った瞬間、中村帆はまだボックスから離れた場所にいた。パスがつながれている間に動き出し、内田から三田にボールが渡る瞬間に一気に加速。広島の森島の監視を逃れて、フリーでボールを受けられる位置に動いた。
耐えてしのいで、チャンスを待ったFC東京が先制に成功。広島の左右の揺さぶりからゴール前にクロスを入れられ、木村のクリアがオウンゴールになりかけた場面もあったが、波多野が腕一本でストップして事なきを得る。最後まで集中力を切らさずに戦い抜き、1-0で勝ち切った。
「今日出た選手は気持ちのこもった素晴らしいプレーをしてくれたと思っています。何も言うことはないです。
今シーズンは彼らがローテーションをしっかりと担って戦ってくれた。その経験値と、ACLでは、こういういいゲームをしながら勝ち切れないということを経験しました。ハーフタイムには素晴らしいゲームをしているから勝ち切ろうという話をしましたが、後半の残り45分も気持ちの入ったゲームをしてくれた。そして、そういうゲームで勝利を手にした。そこはACLで悔しい思いをしたことも、つながったのかなと思います」(長谷川健太監督)
紺野は8月26日の鹿島戦以来のリーグ戦出場。丹羽も10月4日の湘南戦以来の出場。ともにACLでも出場機会を得たが、指揮官によれば出番が限られる中でも常に練習に真摯に取り組み、今季を戦ってきていたという。出場3試合目の木村、途中出場の矢島や平川も強い思いを胸にピッチに立ったに違いない。そんな選手たちが、この日、ピッチで勇躍した。
気持ちのこもったプレーで、つかみ取った勝利は、チームの未来にとって、ただの1勝以上の価値がある。試合後の会見で、指揮官が選手たちを称賛した理由だろう。
現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE