川崎フロンターレが明治安田生命J1リーグで史上最速優勝を決めて、早くも1週間。鬼木達監督は「次」へと視点を定めている。今季、圧倒的な実力を備えたチームを作り上げたポイントの一つに「自分への叱責」を挙げて振り返った。

上写真=選手ではなく自分を叱るというマネジメントで、鬼木達監督が優勝へと導いた(写真◎Getty Images)

サポーターの方々を魅了したい思いは強いんです

 喜怒哀楽でいうと、チームを作る上でリーダーの色が出やすいのが「怒」ではないだろうか。怒り方次第で、チームを上手にコントロールしていくのはよくあることだ。

「怒ったこと……あまりないですねえ」

 鬼木達監督は少し困り顔だ。

「強気でやれないゲームのとき、例えば初めて負けた名古屋戦のあと、神戸との試合ではハーフタイムに言いましたけど、それ以外で何か怒ったかは…」

 名古屋グランパスに連勝を10で止められたあと、ヴィッセル神戸戦では連戦の疲労もピークで覇気のない前半を過ごした。ハーフタイムに檄を飛ばして後半になんとか立ち直り、引き分けに持ち込んだことは、今季のターニングポイントの一つだろう。

「常に高いものを要求していますし、その後も、切り替えが遅かったり球際で弱くなると厳しく言いましたけど、それは怒っているのとは違いますし」

 怒る必要がなくあの魅力的なチームを作った、と考えるとますますすごいことだが、「でも、自分には常にありますね」と思い出す。

「自分に対してはたくさんあります。勝っているときもそうです。強気でいけたか、弱気だったんじゃないか、勝っているけれどもサポーターの皆さんに喜んでもらえるゲームができているか、そこまでちゃんと持っていけているかどうか。最善の準備をしているつもりですけれども、負けたゲームや不甲斐ないゲームをしたときには、もっとできたことがあったんじゃないかと、選手にではなくて自分に対してすごく思います。それは毎回ですかね」

 監督ならではの悩みだが、今年は超過密日程で試合をこなしてきたから、なおさらだ。

 そして、優勝したからこそ、新チャンピオンとしての振る舞いが新たに問われることになる。

「何でも次に向かわないと始まらないですから、自分もそうですしチーム全体にもその意識は浸透してきていると思います。自分がブレたらチームもブレますから、意識をするというか、やるべきこととして考えています」

 今季はリーグ戦の残りは4試合。そして、天皇杯は準決勝からの登場で、最大2試合。超攻撃で魅力たっぷりに相手を圧倒する「フロンターレ2020」というチームはもう、合計6試合しか見ることができない。

 リーグ戦ではすでに勝ち点75、勝利24で歴代最多記録を更新していて、あと6ゴール奪えば、2006年に川崎F自身が記録した84という最多得点の数字を超えることになる。それを、あえて選手たちに話して意識させているという。

「今回優勝して記録を作りましたが、もっともっと上の見たこともない数字を見せられるようにと話していますし、自分たちが作れる可能性があるのでチャレンジしなければいけないと思います。今後、なかなか塗り替えるのが難しいような記録を作れたらいいと選手には言っています」

「そして、記録のこともそうですし、残りの試合でサポーターの方々を魅了したい思いは強いんです。自分もそうだし、選手もそういう気持ちでいてくれていると思います」

 頂上の「向こう側」にはまた新たな景色が待っている。監督にも、選手に、サポーターにも。


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